四時間目終了のチャイムが鳴り、号令を終えた後クラスが騒めき始めた。

うるさい。信じられないくらいにうるさい。
 

クラスメイトは先ほど行われた授業の内容を
「わかりにくすぎる」「先生やめた方がいいと思う」「授業中暇だった」などと、次々に話している。
 

…そんなに授業嫌なら学校こなけりゃいいのに。そもそも授業中に暇なことがあるのか?
せいぜい数学などの問題を解いて時間を持て余した瞬間ぐらいだろう。そうやってぐちぐち文句を言うから先生が足りないんだろうに。どうせ誰が先生であれ文句を言うのには変わりないくせに。
君たちが困ったことがあった時いつだって見方になってくれるのは先生じゃないか。
 
と、まぁ悪口が飛び交うクラスに所属している。高校生は青春時代だとか、青春を謳歌できるとか、そんな言葉が多いけど実際そんなことが経験できるのはほんの一握りの人だと思う。基本的それは区別できる。主に三つだ。
 
 一つ目に、陽キャか、陰キャかだ。
理由は簡単だ。青春するには彼氏がいるんだろう?それか友達。陰キャにそんなキャッホイして遊べるような才能がないことだからだ。陰キャは、まず『どうやって学校生活を平和に過ごそう』から考え始める。彼氏や友達のような存在の作り方は難しいのだ。
 

二つ目に、勉強が忙しすぎるからだ。
高校生は中学生の基礎を応用として解いている。と言う人が多い。実際はまぁ合ってはいる。その応用が難しすぎるのが答えだ。そもそも中学生の問題が楽々解けていないと高校なんてついていけない。ましてや、赤点を繰り返しとれば留年だ。小中学生には無い存在だ。だから、テストで赤点を取らないためにも毎日コツコツ勉強しなければいけないのだ。


 三つ目は、単に実力不足な人。
というよりか、恋愛漫画とか恋愛小説みたいな出会いとかあるはずがない。皆は夢を見がちなだけだ。高校生とか中学生の恋愛はほぼ遊びの人が多い。本当に好きでどうしようもないカップルなんて一割もいるのだろうか。

こんな感じで、高校生活はそこそこ大変だ。青春なんてできる暇がない。ちなみに私は青春ができない人の割合に入る。要は陰キャだ。まず、私には友達と呼べる人がいないから。

「ひ~まりっ!」

「いたっ…」

私の名前を呼んで、そして私の頭をたたいたのは同じクラス兼、幼馴染の『桃川 千穂』だった。…そういえば一人だけ友達がいたんだった。こいつはバリバリの陽キャだ。となぜかふっと頭に流れた。

「痛いんですけど…」

「ははっ。ごめんって」

そう言って手を合わせ、ごめんなさいのお辞儀をする。まるで私が神社の神様になってお祈りされているみたいだ。

私はため息をついて、

「まぁいいけどさ」

と言った。すると千穂は

「うひひ」

と気持ちの悪い笑い方をして、私の前に座った。

「で、どうしたの?」

「え…何かあっちゃ来ちゃいけないの?」

「別にそんなことは言ってない。顔に聞いてよ!って書いてある」

「さっすが向葵!私のことよく分かってんねっ!!」

「そうだねー」

「なに~…そのしらけた感じ。千穂ちゃん泣いちゃうぅ~」

「気持ち悪い」

「はい。ごめんなさい」

しゅん、としてご飯を黙々と食べ始めた。……黙々…?

「いや、用事は!!!??」
つかさず突っ込んだ私に、驚いた顔をした千穂。

いや、こっちがびっくりだわ。そんな数秒後に忘れるの⁇おじいちゃんかよ。

しばらくして、千穂がつぶやいた。
「そうだった」

いや、え?怖い。そんなすぐ忘れる用件だったの?

「最近、自殺者多いらしいよ」

自殺した人に何があったのかは分からないけど、心底どうでもいい話だった。

「なんか怖いよね~、この村」


【自殺者が多い】それはこの村で起きている事件だ。この村は日本で一番小さく、特に何もない村だ。
自殺者はこの村の者ではない。わざわざこの村にやってきた観光客(?)だ。

おそらく自殺を目的としてこの村にきているのだろうが、そんな自殺観光名所みたいのものも、有名な灯台や高台はこの村に一切ない。

村を高くから眺めても、ほぼ田んぼしかない。
この村にあるのは精々、田んぼ、家、小さな病院、交番、スーパー、物珍しい小中高大一貫公立学校、幼稚園くらいだ。
学校も横に広いだけで、2階という死ねない程度の高さだ。人口も少ないので狭い。自殺するには余りにも不都合である。


「何しに来てるんだろうね。その人たち」

「やっぱり~、死ぬ前にこの村の温かさを感じに来たんじゃない?」

笑っていいのか悪いのか分からない返事が返ってきて私は黙った。

「わー!ごめんってぇ!!…やめて!軽蔑するような目で見ないで‼!」

相変わらず騒がしい人だ。私は早々と昼食を食べ終え、次の移動教室の準備をした。

教室を出る前に千穂に「じゃあ、先行くね。」と言って教室を出た。

「えっ⁉嘘‼!待ってよ、向葵~!」という声が聞こえたが、まぁほっておいて大丈夫だろうと思った。