部屋の整理をしてる時に、はらりと舞って床に落ちた手紙があった。
数分間それを眺めた後、僕は導かれたようその手紙を開いた。

「ーごめんなさい。」

こんな文章から始める手紙があるだろうか?喧嘩した次の日でもないのに。
そんなことを思い浮かべながら、もう一度手紙を開けた。

「-これは君に贈る最初で最後の手紙です。どうか最後まで読んでいただけると幸いです。読みたくなければ、机の奥にしまったり燃やしたり引きちぎって捨ててくれても構いません。」

その文章を見て、思わず笑ってしまった。笑っているよ。笑っているけど、頬に水が流れている。
これじゃあ、まるでこないだの君みたいじゃないか。

流れの止まらない水は滴り、とうとう手紙を濡らしていく。
文字が滲んで手紙が読めなくなってしまうのは困るから、急いで水を拭く。

君と僕が出会って過ごした時間は一週間。短いようで長い時間。
それなのに溢れて止まないこの水は君への思いを強く表現しているみたいだ。僕は懸命に手紙を読み続け、気づけば最後の文章を読んでいた。

「2029年 9月13日 月乃 向葵《つきの ひまり》」

そうか。君の苗字は『月乃』っていうんだな。初めて知ったよ。

僕は手紙を胸に当て頬を濡らして目をつむった。