「いらっしゃいませ」

 よく通る声が狭い店内に響き渡る。私は泉ちゃんと一緒にレジの方へとくるりと顔を向けた。

「あ、あの人だ。店主のお孫さん!」

 白いパーカーに黒いエプロンをつけた大学生ぐらいの男性が、レジの前に立っていた。艶のある黒髪。前髪が隠れないぐらいの絶妙な長さで流していて、雰囲気だけでもイケメンなのに、目までつぶらで吸い込まれそうだった。私たちと視線が合うと、目尻を細めてにっこりと微笑む。その笑顔に、私は早くも胸を打ち抜かれていた。
 か、格好良い……。
 まさか、自分が他人の外見や雰囲気だけを見てこんなにも射抜かれてしまうなんて、思ってもみなかった。泉ちゃんは、隣で固まっている私に対して「ね、言ったとおりでしょ」とニヤリと口の端を持ち上げた。

「あの、何かお探しですか? それとも“相談”でしょうか? “相談”でしたら、ただいま順番待ちの列ができていますので、お手数ですが並んでいただけますか?」

 “相談”のところで、彼はレジ前に並んでいる女性客の列の方に視線を移した。店の外まで溢れた人たちが、じっとりとした視線を私と泉ちゃんに向けてくる。
“相談”とは一体何事だろう。首を捻って様子を窺っていると、レジ前に「お悩み相談200円」と書かれた小さな看板が立っていることに気づいた」

「お悩み相談、200円」

 思わず声に出して読んでしまう。

「お悩み相談? なにそれ」

 泉ちゃんがすかさず疑問を口にする。うん、私にも分からない。説明を求めるように男性スタッフの方を見ると、彼はにっこりと笑ってこう言った。