放課を知らせるチャイムが鳴り響いて、泉ちゃんが「美由ー!」と早速声をかけてきた。遅れないように、ささっと鞄に荷物を詰める。教室を出ると、部活に行く人たちが数人で集まって指定の場所に向かっていた。私も泉ちゃんも部活には所属していないから、二人で帰路につく。
 電車に乗って、私たちの自宅の最寄駅まで向かう。駅を出ると、見慣れた道を進んだ。街角にある「ひまわり」は通学路からは外れているので、わざわざ寄り道する必要があった。

「ここだね。うわ〜今日もすごい人」
 
 店先に並んだお客さんの数を見ただけで、「ええっ」と驚きの声が漏れる。
 五人、六人、七人——小さな文房具店の入り口から溢れている人の数を数えた。ほとんどが女性客で、中年ぐらいの女性が多い。大学生らしい女の子もいた。

「なんで……?」

「答えは店の中にある! 早速入ろう」

「え、ええ!?」

 外にはみ出している人の列を追い越して、泉ちゃんがずんずんお店の中に進む。店内はそれほど広くなく、ノートやペン、クレヨン、画用紙、はさみ、のり、などの文房具が雑多に並べられている。小学生の頃から何度も目にしてきた光景だ。でも心なしか、前回来た時よりも、文房具の種類が増えたような気がする。
 レジ横の棚に並んだ可愛らしいデザインのレターセットが目に飛び込んできた。近くにあったPOPにはデザイナーの名前と、簡単な紹介文が書かれていた。
 違う。今までの「ひまわり」とはどこか違っている。
 前はごく普通の——デザイン性よりも機能性を重視した実用的な文房具しか置いていなかった。でも今は、レターセットに限らず、メモ帳やペンも、なんだかカラフルで人目を惹きつけるアイテムが多い。POPも増えていて、おすすめ商品がぱっと見て分かるようになっていた。