美由(みゆ)ー、醤油とって。あ、あとティッシュも」

「こっちはドレッシングちょうだーい」

 艶々のお刺身と、健康そうなコブサラダ、私の好きな鶏の唐揚げが並んだ食卓で、二人の姉から指図が飛んでくる。私は「はいはい」と二人に対し、せっせと渡すものを渡していく。どうしていつもこき使うの、なんて不満は口に出さない。流されるように、長女・真由(まゆ)と次女・沙由(さゆ)の言いなりになった。

「ちょっとあんたたち、美由にばっかり命令して、自分で取ったらどうなの」

 呆れたお母さんの小言を聞くのも飽き飽きした。私がそう思うのだから、真由と沙由はもっとそう感じているだろう。

「あ、そういえば美由。ご飯食べたら作業場に来てちょうだい。教えたいことがあるから」

「また?」

「また、じゃないのよ。あんたいつも勉強がーとか、友達と電話ーとか、いろいろ理由つけて来てくれないじゃない。今日こそはちゃんと話したいの」

「はいはい」

 今度は私に呆れた顔をするお母さんのことが、私はちょっとばかし憎い。ついでに二人の姉たちも。大学生の二人は、日々友達と夜遅くまで飲んだくれたり、休みの日は彼氏とデートに行ったり、自由な生活をしている。大学だってろくに行っているのか分からないくらい。「母親の用事は全部美由に任せた」と言わんばかりに、私に全てを押し付けてくる。自由奔放な姉二人と、真面目にしか生きられない私。どうしていつも、私ばかりが窮屈な思いをさせられているのだろうか。