「さーくらちゃん、今帰り?」

「うわっ、あ、橘先生…、」

「うわってなんだよ、さすがにちょっと傷つくんだけど?」


あの日から、橘先生は塾で私の姿を見かけるたびに

何かと声をかけてくるようになった。


「今日は俺ももう上がりだからさ、家まで送ってく。」

「…いいんですか、講師が生徒にそんなことして。」

「いーのいーの、俺別にただのバイトで正社員じゃねぇし。」


これ本業ね、と橘先生が見せてきたカードは学生証で

そこで初めて橘先生が大学生だということを知った。