「俺、咲良ちゃんのことが好きだ。俺と付き合ってほしい。」
全ての始まりは、あなたのその言葉だった。
5月、私橋本咲良は高校生最後の春を終えようとしていた。
「咲良ー、学校行こー。」
「あ、うん。今行くー!」
小学校の時から
ずっとお互いの自宅の距離が徒歩5分の松坂結莉は
私にとって誰よりも大事な親友であり幼なじみだ。
「あ、そういえば私ね、来週から塾通うことになったから。」
「塾!?咲良十分賢いのに!?」
「って言っても、1番不安な英語だけだから。ほとんど今までと変わらないと思うけど。」
「えーーー、咲良と遊べなくなるの私やだよーー。」
結莉は、まるでぴえんの絵文字みたいな顔で
私の服の袖を掴んで腕を絡めた。
「週に2回だけだし、休みの日は別に遊べるって。」
「ほんと…?やだからね、私のことほったらかしとか。」
「わかってるって笑」
友達にしては愛情が重いって言われる時もあるけど
私だって結莉のことは大切に思ってるし
こんな私のことをここまで好きでいてくれるのは、すごく嬉しい。
「ちなみに何曜と何曜なの?」
「えーっと、火曜と金曜だったかな。」
「火曜!?ねえそれ今日じゃん!えーー、やだ一緒に帰りたいーー。」
心の準備ができてないー、と泣きそうな顔をする彼女の頭を
私は苦笑いしながら撫でた。
『咲良、結莉、おはよー。相変わらずラブラブだねぇ笑』
「おかげさまで笑」
私も結莉も、家から近い高校に進学したし
そもそもクラス替えがない高校だったせいか
クラスメイト達も私たちのこの距離感にはもう慣れっこだ。
『ほらホームルーム始まるよー。』
「ううー、離れたくないー。」
『いやいや席隣でしょ、あんた達。』
呆れ顔のクラスメイトと
涙目の結莉の構図が、どうにもこうにもシュールで
私は込み上げる笑いを必死に我慢した。
-放課後-
「じゃあ、塾こっちだから。また明日ね、」
「夜帰る時気をつけてよ!呼んでくれたら私迎えに行くし!」
「大丈夫だって。心配しすぎ。」
「心配だよ!だって咲良可愛いんだもん。」
大真面目な顔でそう言い放つ彼女に
私はありがと、とだけ言って
じゃあねと手を振った。
「ったくもー…、過保護すぎ。」
結莉は、私のお母さんよりもお母さんみたいに
私のことを心配してくれるし
多分だけどほんとに本気で私のことを可愛いって思ってくれている。