そんなトントン拍子で来た俺だけど、さすがに見知らぬ誰かに
「バンドやんない?」
なんて声掛けるのが無謀なことくらいわかる。


今思えば、俺は本当にタクミに世話になっていたな。

ただのクソガキだった俺をバンドメンバーに迎え入れてくれ、毎日付きっきりでギターを教えてくれた。


デビューしてからも、事あるごとに俺はタクミに相談していた。


そのタクミはもういない。
俺はこれから一人で戦うんだ。


あーダメだダメだ。

こんなネガティブになってちゃ俺らしくない。


その日俺は、悶々としながら眠れない夜を過ごした。