俺はメンバーひとりひとりの顔を見回した。


メンバーは気まずそうに俯き、一言も言葉を発しない。


その姿はなんだか滑稽で、こんなバンドに属している自分が馬鹿らしく思えてきた。


こいつらと同じ夢なんて追えるのか?


「シュン。」


タクミが立ち上がった。


「お前の気持ちはわかるよ。でもな、俺達はこうして大好きな音楽で食っていけて、ファンもたくさんいて、大きな賞なんかもらえるほどビッグになれて満足してるんだ。
俺には女房も子供もいるし、今の生活を犠牲にしてまでロックに執着する気はないよ。
それにな、言いづらいけど、お前の曲が没になるのは単にいい曲がないからなんじゃないか?」


ぎくり。

強気の俺の気持ちが萎んでいく。