自分の家に自転車を置くと叶人の家へ。

「おじゃまします!」
「あら、陽向くん。家に来るの、ちょっとだけ久しぶりじゃない?」
「最近カフェのバイト、シフトが結構入ってたんで……」
「そっか、ゆっくりしてってね」
「ありがとうございます」

 俺と軽く会話した後、叶人の母親は微笑みながら叶人と目を合わせて首を傾けた。そしてその反応を確認した叶人は笑顔で頷いた。まるでテレパシーで会話してるみたいだな。叶人はテレパシーが本当に使えてもおかしくはない雰囲気をしているし。

 というか、ふたりは何を確認したのだろう。

 二階へ上がり、叶人の部屋に入る。
 叶人は可愛いものが大好きで、水色の生地に白い水玉の柄なカーテンをはじめ、ベットやぬいぐるみも〝可愛い〟で揃えられている。その中に馴染む叶人はやっぱり可愛い。

 叶人は部屋の真ん中に、折りたたみ式のベージュのローテーブルを置く。俺がテーブルの前に座ると、叶人は前髪をピンで止め、勉強机に乗せっぱなしだった羊毛フェルトの制作セットを手に取り、俺の向かい側に座った。

 俺も今日買った羊毛フェルトセットの準備を終え、早速作業に取り掛かる。
 俺はウサギの胴体を、叶人は顔を手伝ってくれることになった。