一緒に買い物に行く約束をした日、放課後いつものように陽向くんが教室に迎えに来てくれた。僕は鞄に物を入れて、帰る準備をする。

「まず、羊毛の材料買ってからソフトクリーム食べに行くでいい?」と、陽向くんは質問してきた。
「うん、そうしよう」
「手芸屋って、駅前にあるよな?」
「そうそう、そこだよ!」

 羊毛フェルトが売っていて、自転車で行けるお店はこの辺にいくつかあるんだけど、陽向くんは僕と同じお店を想像していた。いつも僕が行きたい場所と陽向くんが行きたい場所が一致するんだよね。

「色々教えてな」
「うん、もちろんだよ」

 僕たちは、自転車で目的地の手芸屋さんに向かった。陽向くんに羊毛フェルトについて教えるのが楽しみだ。いつも陽向くんは僕に色々教えてくれたりしてくれるから、力になればいいな!って思う。そう考えているうちに、あっという間に駅前に着いた。駐輪場に自転車を停めて、手芸屋さんへ。

 店の中に入ると早速「こっちだよ」と、羊毛フェルトがある場所まで案内した。

「まずはね、ニードルだけでもできるんだけど、このスターターセットがおすすめかな? あとは、使う色の羊毛を選ぶだけで、揃う感じ」
「こんな感じのを使って作るんだ? 初めて知った。楽しそうだな」

 僕が手に取った、羊毛フェルト制作のための道具たちが袋に入っている商品を、まじまじと陽向くんは見つめた。

「羊毛をぶすぶす刺すニードルと、ニードルホルダー。作業台になって、針が折れるのを防止するマットがセットになってるよ」
「じゃあ、これ買おうかな?」
「うん!」

 まるで自分がここのお店の店員になって、お客さんの陽向くんに説明しているみたいで、楽しい。

「あとは、羊毛だね! 陽葵ちゃんは何のキャラが好きなの?」
「今、ネットではやってるウサギのキャラ……名前、なんだっけ? ど忘れした」
「うさぎのもっふんちゃま?」
「そう、それそれ」

 うさぎのもっふんちゃまは、真っ白な姿で、つぶらな瞳。とても可愛く、今動画サイトで子供たちに人気なアニメキャラクターだ。ちなみに他にも色や形が違ううさぎたちが出てきて、ミニゲームで競ったり色々遊んだり動画内でしている。

「うちに白い羊毛沢山ありすぎるから使う?」
「ありすぎるの?」
「うん、白色の羊毛は可愛くてね、買いすぎたんだ」
「叶人は、羊毛だけですでに可愛く感じるんだな」
「可愛いよ! ふわふわだもん!」

 そんなこんなで、耳や頬に使うピンク色や、耳についている花とか……白以外で必要な色の羊毛を選び、無事に陽向くんの羊毛フェルトグッズを買えた。よかった! 

 無事に使命を達成できて安心した気持ちになった。それから歩いてソフトクリームのお店に向かう。

「最近いつもソフトクリーム奢ってくれて、ありがとう。いつも奢ってもらってばかりで、ごめんね」
「いいんだよ、だって叶人に奢りたいから奢ってるんだもん」

 陽向くんは本当に優しい――。