既読スルー

この日は同じ日にやってきた男友達と寿司屋に行く話をしてると、真子が「私も行きますと」声をかけてきた。その瞬間、康二は得体のしれない衝動を身体が感じたのであった。その日、LINEでも、断ると。真子は、体調がいいときに行きましょうねと返信を入れてくれた。毎日のようにカラオケをデイケアで、一緒に歌いいつしか康二は惹かれて行くのである。そんな折に、職員の電話の声が飛んできた。真子はデイケアを卒業して働きに行くみたいだ。直接真子の口からは入らなかった情報である。彼女がデイケアを去る前に、自分の気持ちを伝えなければならないと感じた康二は、真子と過ごす時間を大切にしつつ、次の機会を心待ちにすることにした。2019年も終わりに近づく頃、康二は真子からのLINEの返信が徐々に途絶え、既読スルーが続くことに気づいた。それでも彼は、返信のこないメッセージを毎日打ち続けていた。真子の存在が彼の心の支えだったからだ。翌年、真子は仕事を始め、週に二度ほどしかデイケアに来なくなった。康二は彼女との距離が広がることを感じ、焦燥感に駆られる日々が続いた。その矢先に、コロナウイルスの流行が始まり、高齢の両親を抱える康二はデイケアへの通院をやめる決断をした。不安な状況の中で、康二はますます孤独を感じるようになり、真子との距離が遠のくことに心が重くなっていった。しかし、彼は家族の健康を守るため、最善の選択をしたのだと自分に言い聞かせていた。