中学一年生の春 私は君に恋をした。
誰にも気づかれない私の想い。
君に恋をしていた一年間はこれ以上ない幸せな日々だった。
 
 それは、入学式の日。初めて君の顔を見た。顔は前髪で隠されていたね。人の顔を見たくなかったの?それとも自分の顔に自信がなかったの?でもね、私はもっと君の顔を見たかった。

 ねぇ、洸くん。君の名前を知った日から私の頭は洸くんの事しか考えられなくなっちゃった…。
 
 学校に行く理由?洸くんに会うため。部活動に励む理由?洸くんに応援してもらうため。今を生きる理由?洸くんに認めてもらうため。全部全部、洸くんのため。私が勝手に洸くんのためにやってるだけで、君は迷惑をしていたよね、もっと早く言って欲しかったな。自分じゃこの気持ちを止められないから。

 ねぇ、覚えてる?洸くんが私の存在を初めて認識(デート)した日のことを。8月1日君の誕生日にデートをしたね。その日の前日は楽しみすぎて眠れなかったよ。でもね、今考えてみたら私本当は怖かったんだと思う。4月から連絡は頻繁に取っていて君に好意を伝えていたけど、君は私の顔すらも知らなかったよね。だから四ヶ月間の間で君が築き上げた洸くんにとっての私の顔が想像と違かったら。なんて思うと眠れなかった。

 8月1日。私の少し後ろを歩く君は全然楽しそうじゃなかったね。でもね、私は楽しかった。だって君がたくさんの初めてをくれたから。初めて嗅いだ君の匂い。初めて知った君の声。今じゃ思い出せないくらい些細なことだったのかも知れない。