「あ、はい。今日からよろしくお願いします！」

礼儀正しい人だな、きっと年上の人…だよね？
私も見習わないと。
すると遠野さんがフイッと私から目を背け、顔を腕にうずくめる。

まさかまた寝ようと！？

「こらっ鈴くん、寝たいなら自室に戻りなさい？明希ちゃんが困るわよ〜。」

そこで遠野さんはバッと顔を上げ、

「え！ここ俺の部屋…じゃなかった！ごめんなさい！」

そう言って、遠野さんは慌てて立ち上がり、頭をクローゼットの縁にぶつけてからこの部屋を出ていった。
大丈夫かな…？

「頭大丈夫かな、鈴くん…」

「あはは…そうですね…」

千佳さんの言葉に私は苦笑いする。
千佳さんは話題を切り替えるというように、両手を合わせた。

「じゃあ明希ちゃん、荷物置いて外に出ようか！」

「はい！わかりました！」

元々この後は、私が来週から通い始める私立蛍雪学園への通学路の下見と、この近くの散策に行くと千佳さんと約束していたのだ。

千佳さんには先に一階に降りてもらい、散策が待ちきれない私はルンルンで荷解きをする。

「これでよしっ！」

早く行きたい私はちゃっちゃと荷解きを終わらせて部屋を出た。