「ふ」

「せん,ぱい?」



なにを笑って。



「ごめん。翠ちゃん,いっぱい考えてるなぁと思ったら」



もしかして,全部,わざとなんじゃ……っ!!!



「あ,終わった。あんまり景色見れなかったねえ」

「ちょっと,せんぱ」

「ほら,ゆっくりおりなきゃだめだよ~」



んんんっ!!!!!



ゆっくりおりながら,ぱっともう一度見る。



「ん?」


戦意が削がれる。



「先輩って」



声が震える。

こんなこといったら怒るかな。



「可愛いもの好きのくせに,全っ然可愛くないですよね」


あと少しで足がつく。

その寸前に先輩は私の指先からそっと引っ張った。


「ふわ」

「翠ちゃん」





夕日が,輝いている。

先輩の笑顔と一緒になって。



「気付いた?」



いたずらなその顔を,照らす。



『僕のこと,すっごく好きだよねえ』



そんなわけ,ない。

もし今,私の顔が染まって見えるのだとしても。

それも全部,夕日の力だ。