「ねぇ,ちょっとでいいから教えて?」
「巴先輩いっつもいないんだよー」
私の言葉を待ってすらくれない空気に,私は口をつぐんだ。
落ち着いて,もう一度口を開く。
「ごめんなさい。昨日はたまたま出会っただけで特に何も……場所も,あんまり知られたくないみたいだったから」
私が皆の言葉を割るように口を開くと,皆は途端に肩を落とした。
「えー」
「でもそうだよねぇ。先輩誰にも追いかけさせないって言うし~」
「あーあー。でも別に教えたってうちら南さんから聞いたなんてバラしたりしないのにねー」
「南さんごめんねー」
しらけたり気を使ったりしながら離れていく周囲。
もっとなにか他に言えることがないかくらい考えてみたら良かったな……
しゅんと俯くその横で,花塚さんの視線に気付く。
驚いた私はつい,顔を背けてしまった。