「説明は以上なのですが、何かご質問等ありましたら、お気軽におっしゃってくださいね」

「いえ、大丈夫です。いろいろとありがとうございます」

「よかったです」


机の上のチラシを指さしながら、おずおずお願いする。


「それで、あの……年会費のお支払いと、こちらの手ぶくろコースで寄付をして、この本をお借りしたいのですが」

「ありがとうございます!」


年会費を払って貸し出しカードを作り、本を鞄にしまう。


ここからが問題である。お財布の中に千円札も五百円玉もあるのも触って確かめて、どちらにするか迷って指を行き来した。


寄付のコース名の元になったと思われるお話では、白銅貨を二枚渡す。

わざわざ千円札ではなくて五百円玉でもよいと但し書きがあるくらいだから、五百円玉にしたら何かしてくれるのかな。


木のトレーに五百円玉を二枚出すと、本多さんは心得たように、ちんちんと軽く鳴らしてから寄付箱に入れた。


「ありがとうございます。たしかに頂戴しました」

「いえ、こちらこそ。思ってた通りのお話だったみたいで、嬉しいです」


思わず笑いがこぼれる。


「この年になって、児童書が好きなんて言いにくいなと思ってたんですけど、通じるのって嬉しいものですね」


照れを含んだこちらの言葉に、本多さんは穏やかな微笑みを返した。


「大丈夫ですよ、本を読むのに年齢なんて関係ないです。ぼくは児童文学が専門ですし」


一欠片だってからかいがにじまない、真剣な声色。