「今日からこのクラスに転入生が来ます」
担任の初芽先生の言葉に驚く。
転入生・・・そっか、だから・・・。
私は白樺霞流(しらかばかりゅう)、高2。
一応、白樺財閥の1人っ子だ。
「それでは紹介します」
こころなしか先生の表情が厳しい気がする。
「はーい、はじめまして。桜弥偲流(さくらやしりゅう)でーす、よろしくね」
軽い調子で教室に入ってきたのは私と同じエメラルドブルーの髪に、金色の瞳の美少年。
「ちゃんと挨拶をしなさい」
案の定先生にも怒られ、桜弥さんはてへっと笑った。
「・・・んぁ」
桜弥さんの視線がこっちに向く。
「・・・?」
首をかしげると、桜弥さんが近づいてきた。
「んふふ、久しぶりだねぇ霞流」
「・・・何故私の名前を?」
「知ってて当たり前だよー・・・逢いたかったぁ」
桜弥さんはうっとりと両手を胸の前で手を重ね、そう言う。
知ってて当たり前・・・?
「桜弥さん、なにをしてるのです。あなたの席はあちらですよ、早くお行きなさい」
先生のお叱りがまた飛び、桜弥さんは面倒くさそうに席に着く。
私の斜め前の横の横・・・つまりは遠い席だ。
ここ・・・アフロディーテ学園ではSSクラス、Sクラス、Aクラス、Bクラスがある。
エリート校なんだけど、そのなかでもSSクラスは成績トップ10の生徒が入れるクラスだ。
私はSSクラスだけど・・・桜弥さんが来たからクラスメイトが1人いなくなっていたのか。
「それでは一限目の数学を・・・」
「あ、霞流ー!」
口を開きかけた先生を遮り、桜弥さんが私の名前を呼ぶ。
「昼休み、食堂ねー!」
・・・返事はしないほうがいい、よね?
「・・・では数学を始めます」
気を取り直して先生は数学の教科書を手に取り、ホワイトボードに書きながら桜弥さんに向きなおった。
「では転入生、この問題の答えは」
「・・・X=247です」
指名された桜弥はなんなく答え、席に着く。
「よろしい。では白樺さん。こちらの問題は?」
「はぁ?!なに言っちゃってんの?この問題大学入試じゃん!しかも名門だし!生徒虐めんの?!」
問題を見た桜弥さんが文句を言う。
そんな中私は席を立ち、まっすぐ前を向いた。
「はい、xとyの関係性から、この問題はa=39です」
「複雑な問題も式を立てずにできましたね、すばらしい」