結芽はフラフラとした足取りで屋上へと向かった。放課後の学校は、運動場には部活に勤しむ運動部が活動をしており、道には家に帰る生徒たちの姿が見える。

結芽はそれらを光のない目でぼんやりと眺めた。どれほど時間が経っただろうか。結芽は校内用スリッパを脱ぎ捨て、フェンスを乗り越える。

(これで楽になれる……)

結芽の背中を押すように風が強く吹き荒れた。彼女はそのまま屋上から飛び降り、地面に叩き付けられる。

大きな悲鳴が響いた。結芽の意識は暗闇に落ちていったのだ。



結芽が目を覚ますと、シャムスたちが心配そうに見ていた。あの怪物はもう倒したのか姿はなく、穏やかな川が何事もなかったかのように流れている。

「大丈夫?」

フロルの問いかけに、結芽は「はい」と頷いて体を起こす。ステルラが結芽の顔を見て「思い出したみたいだな」と少し安堵したような顔を見せた。結芽はゆっくりと頷く。

この世界、そして目の前にいるシャムスたちは結芽が初めて書いたファンタジー小説の中そのものだ。結芽は訊ねる。