『小説家?才能がないとなれない仕事じゃないか。もっと現実を見なさい。現実的な職業を考えなさい』

『ありきたりな小説ばっかり書くね。まっ、才能ないからしょうがないか』

『小説ばっかり書いてないで勉強しなさい!いい高校・いい大学に入らなかったら人生が終わるのよ。小説はプロの人が書いたものを読めばそれでいいじゃない』

『あのファンタジー小説、つまらなかったよ。ダラダラしていて好きじゃない。君の小説に読者なんているの?』

結芽の瞳から涙が溢れた。痛みが走る。体の痛みよりももっと大きなものだった。息が止まるような感覚がし、必死で呼吸を繰り返す。手足が痺れ、体が大きく震え出した。

(ああ、そうだ。私ーーー)

結芽は意識を失った。



一ノ瀬結芽は市立中学校に通う中学二年生だ。そんな彼女は幼い頃から読書が好きだった。内気な彼女にとって、本は自分の心を救ってくれる場所だった。

「あっ、この本の新シリーズ出てたんだ!」

数ある小説の中でも結芽はファンタジー小説が好きだった。国内のものや海外のものを読み漁り、心の中で空想の世界を作る。それが彼女の楽しみだった。