「私は死んだの?」

「いや、死んでない。昏睡状態で眠っているんだ。結芽が目覚めたいと思えば目覚めることができるよ」

シャムスの言葉に結芽は「なら目覚めなくていい」と俯く。今も頭の中では飛び降りる前にかけられた言葉が次々と再生され、割れてしまった心をさらに傷付けていく。

「もういいの。死にたいのよ」

結芽の頰を涙が伝う。その時だった。シエロがゆらりと動く。次の瞬間、結芽の頰に痛みが走った。ジンジンと熱を持つ頰に、結芽は自分が頰を叩かれたのだと気付く。

「そんなことを気安く言わないでください!!あなたが私たちとこの世界を生んでくれたんですよ!!」

シエロは大声を上げる。結芽は何も言えなかった。シエロの言葉は続く。

「あなたがこの小説を書いている時、楽しそうにしていたのも知っています!!書き上げた時、喜んでいたことも知っています!!」

「それだけじゃダメなんだよ。才能がないとダメなんだよ!」

涙を拭いながら結芽は言う。するとすぐにフロルが「才能なんていらないよ」と返した。