「お邪魔します…」
「明寿咲連れてきた‼︎」
げ、玄関広い…。
しかも、大声で龍二が叫ぶし…。
「マジ⁉︎ 明寿咲〜♡」
いきなり子犬みたいな男子が駆け寄ってきて、抱きついてきた⁉︎
「ようこそ、磯崎家へ‼︎」
「な、なんか見たことある…」
「ええっ⁉︎ ちょっと、それひどくない⁉︎ 僕、楽しみにしてたのにぃ〜。クラスも同じだし、席も隣なのに⁉︎ あっ、でもここ最近の明寿咲は、元気なかったし…なんも聞こえてないみたいだったね。僕、猛アピールしてたのに〜っ」
も、猛アピールって!
月曜日から、女子からの視線が痛いんじゃ⁉︎
席が隣なのに気がつかなかったなんて…。
「でも、僕たちと兄妹になるのに、『磯崎』じゃなかったよね?なんで?たしか…羽嶋?」
「そう…。それは、私の意志で…学校では、磯崎じゃなかった私でいたいって思ったからなの。親が運動会で、すごく応援してくれた。私をほめてくれた…たくさん、いい思い出があったから」
私がうつむいて言うと、李月は場を和ますように、
「でもっ!これからは自慢できるね、僕と同居してるって」
そ、そんなキラッキラな瞳で見られても困るよ!
「えっ、クラスのみんなに言うの⁉︎」
ふと言われたことを訊き返すと、当然というようにうなずいた。
「もちろん言うよ〜。クラスだけじゃ物足りないよ。学年?ううん、全校に広めちゃうんだからっ‼︎」
「や、やめてよ⁉︎ ホント、色々大変なんだからね⁉︎」
「やめとけよ…お前は…本当に…」
いつの間にか現れた、もうひとりの男の人。
腕を組んだ背の高いその人は、
「龍二も…李月(りづき)も…、まぁ、ようこそ、明寿咲。俺は、研由(けんゆ)」
1番まともそうな人だなぁ。
「明寿咲ぁ〜?敬語は禁止、だからね。僕、こう見えて、怒らすと怖いよぉ〜!僕だって、好きな人にしか見せないカオがあるんだから」
李月が言うと、全然怖そうに見えない…。
しかも、こんな真っ直ぐに言われたの初めて…。
じわじわと赤くなる頬をおさえながら、
「うん!よろしく、みんな。同居してることは、ヒミツにしてね!」
「わかった」
「了解」
わかってくれない人がひとり。
「ヤダ〜!けど、まぁ、明寿咲が嫌がることはしない!だから、言わないよ。安心してっ」
バチッとウインクをキメる。
ちょっと心配だけど…。
「え、ちょっと待って⁉︎ 俺がいないうちに、自己紹介終わってた⁉︎」
まだ来た〜‼︎
この家には男の人は何人いるの⁉︎
「あ、俺、時尾留(とおる)。ま、よろしく」
こ、高身長イケメンだ…。
この人たち…4人全員、イケメン…。
「これから、俺たちは義理の兄妹ってわけだな。今日から、『磯崎 明寿咲』だな」
そっか!
引き取られたってことは、家族になったんだ!
「時尾留、明寿咲は親から全然俺たちのこと教えてもらってないんだ、色々教えてやれ」
龍二が偉そうに言ったのにムッとしたのか、
「お前が教えろよ」
とにらんだ。
でもこれって、仲がいいから軽口をたたきあってる、ってことでいいんだよね?
「じゃ、俺が教える。俺は磯崎家次男。中2。時尾留が長男で中3。三男は龍二で俺と双子だから中2。最後に…四男の李月」
んん?
なんだかひっかかる。
4人…中3と中2の双子と中1…?
「ええっ⁉︎ もしかして、あなたたちが…ウワサの4兄弟っ⁉︎」
「は?なんだよソレ」
龍二がギュッと眉間に眉をよせる。
いやいや、この人たち、みんなにウワサされてるのを知らないの⁉︎
でも絶対そうだ‼︎
学校のアイドル的存在の4兄弟と、義理の兄妹になるなんて…。しかも同居してるって…‼︎
これはバレたら、色々とマズそうだぞ…。
「と、時尾留さんが来たからもう1回言うけど…絶対に、絶対に同居してるって言わないでね‼︎ ホントお願い‼︎」
「ま、言わなければいいわけだな。了解。なんで言わないようにするのかよくわからんけど」
「とにかく、ありがとう。お願いだからね?それと、私は…みんなのこと、なんて呼べばいいのかな?」
一応、お兄ちゃん、なんだもんね。
ぐるっとみんなを見回すと、
「俺はさっき言った通り、呼び捨てでいい。龍二、な。覚えろよ」
ニヤッとピースサインをつきだす龍二。
「明寿咲っ♡誕生日いつ?」
いきなりぱっちりの李月の瞳に見つめられ、
「え、5月14日だよ」
「じゃあ、僕のほうがせんぱーい!呼び名はなにがいいかな〜。【りづにい】って呼んでよ!」
「はいはい、李月な。俺も呼び捨てでいいから」
研由が苦笑しながら言う。
「えー!そんなあぁ…」
すぐにうるうるの瞳で私に何かを訴えられる。
あ、いいよって言えってこと?
ちょっとイジワルしちゃお。
「ヤダ」
笑顔でそう言うと、
「なんでぇ⁉︎ まぁそんなに嫌ならいいよぉ…ちょっと…ううん、だいぶ悲しいけど…」
「俺も時尾留って呼んで」
悲しむ李月の話をさえぎるように時尾留が言った。
「ずっと玄関に立たせるのも悪いし…あがれよ。ほら」
うわっ、龍二がさらっと重い荷物持ってくれた…。
ひとりでドキドキしていると、
「お嬢様、そんなに重い荷物持って大変でしたね」
と李月が手をとってくれる。
な、なにこれっ‼︎ ドキドキが止まらないんだけどっ‼︎