「どっちがいいの?」
その言葉で、現実に引き戻された。
「嫌だ」
その言葉が言えたら、どんなによかったんだろう。
私は、弱虫だから。
嫌だって言った瞬間に、怒られる。
「私は…っ」
涙がこぼれそうになって、必死にこらえる。
だって、ここで決めてしまったら、正式にこの家族ではなくなる。
実の親から、離れることになる。
「どっち?」
「どっちがいいんだ?」
「ひ、引き取り手を…探す」
震える声で、なんとかそう言った。
それまで、ここの家庭にいられるだろうから。
あ、でも…。愛情は、もうもらえないか。
私は勢いよく席を立ち、自分の部屋のベッドに顔をうずめて、泣いた。大泣きした。
「嫌だ。嫌なのに…」
何も言えない。
養子になったら、また愛情をもらえるのかな。
でも、怖い人だったらどうしよう。
偽り、って怖いな。ウソって、嫌いだよ。
このベッドも、机も、空間も。
全部、無くなる。『無』になるんだね…。
なんだか笑えてくる。
無になってしまうなら、私の存在も消してくれればいいのにな。
こんな家族に生まれるんじゃなかった。
いっそ、この命を投げ出してしまおうか。

__死にたい。