「ただいま」
「おかえり、明寿咲。遅かったじゃん」
すぐに龍二がむかえてくれた。
「みんなにもただいまって…」
「今は俺だけを見てよ?」
私の肩を両手で持ち、至近距離で言われ、
「龍二…?」
「俺だけ明寿咲を守ってなかったと思ったら大間違いだから。裏でちゃんと俺のファンに言っておいたし。俺にいつも明寿咲を守らせてほしい」
いつもと違う雰囲気で、熱帯びた頬と真剣なまなざしに私はドキッとしてしまった。
「龍二、そこまでだよっ!」
突然、李月が飛び出してきた。
「な、なんだよ李月か」
「こっちのセリフだっ‼︎」
2人がギャーギャー争っている間に、時尾留と研由も顔を出した。
「明寿咲、おかえり」
「おかえり〜」
2人に笑顔で言われ、私まで笑顔になる。
「で、龍二に何を言われてたんだ?」
時尾留が腕組みをしながら言う。
李月とたわむれていた龍二が、ピクリと眉を動かして、私をチラリと見やる。
「べ、別に関係ないから!」
「なんだよ、俺たちは明寿咲のお兄ちゃんなのに」
研由が口をとがらせると、
「全然関係ないけど、鬼塚ってお兄ちゃんのこと大好きなんだって。鬼塚は明寿咲をいじめるイヤなヤツだけど、そういうところはかわいいよね。でも安心して?僕、だんぜん明寿咲派だから」
ひとりで話す李月に、みんながあきれている。
「あ、そういえばね。鬼塚さんのこと、翠ちゃんって呼べるようになったし、ちょっと…ほんのちょっとだよ?…和解したかも」
「わーっ‼︎ 明寿咲、エライよ!でも、無理してない?もし、明寿咲に変なゴミがついたら言ってね」
怖いことを言いながら笑顔で微笑まれ、私は苦笑いをするしかなかった。
とりあえず、龍二の話題をさけることができた。
そう思った瞬間__
「話がズレてるよ。明寿咲は龍二に何を話してたの?」
と、時尾留が目を細めながら言う。
「ただ…守ってやるって言っただけだ」
龍二が目を伏せて告げた。
「ああ、悪いが俺が守ると1番最初に宣言したはずだけど?なぁ、明寿咲」
「時尾留。そんな調子に乗らない方がいいよっ!クラスが同じの僕が1番守れるのに…ね、明寿咲?」
「2人とも!俺が守れるんだ。いや、守るんだ。明寿咲が俺のファンにからまれたとき、ファンクラブを解散させたほどなんだ。そうだよな、明寿咲」
時尾留、李月、研由がバチバチしている間に、龍二がコソッと私にささやく。
「俺が明寿咲を守るのに1番ふさわしいよね」
パチっとウインクをキメると、すぐに3人が、
「「「龍二はいつもおいしいところをもってくな〜‼︎」」」
と声をそろえて言う。
「僕、お腹すいたぁ〜。明寿咲、ご飯つくれそう?」
「うん。もちろん」
私は私服に着替えると、キッチンに立って夜ご飯をつくりはじめた。