「実はね、もうふたつ話さなきゃいけないことがあって…」
和花さんの方と、ガレージの方を交互に見る。
「どうしたの?」
「サプラーイズ‼︎ …実は俺たち、盗み聞きしてました‼︎」
時尾留が得意気に言うと、千紗に頬を叩かれていた。
「痛っ…千紗ちゃん、お顔はかわいいのに、することは乱暴なんだね…俺、女子からビンタされるの初めてかも。でも、今俺、ちょっとドキドキしてるよ。千紗ちゃんは?」
わっ、時尾留が小悪魔になって、千紗に迫ってる‼︎
千紗は頬を真っ赤にしている__と思いきや、
「ちょっと、変なこと言わないでくれます?先輩。こんなところ見られたら、私の学校生活どうなると思ってるんですか?」
「へっ?」
「あの、なんなんですか?やめてください」
さすがに時尾留も拍子抜けしたようで、
「あ、あぁ…ごめん」
と素直にあやまっていた。
「ひとつ目は、4人がいたことね。もうひとつは?」
千紗がいぶかしむように4人を見つめた。
「ふたつ目は、俺たちじゃなくて…」
「私です」
研由と和花さんが続けて言う。
「和花、さん…?」
「はい…私は…千紗、あなたの義姉です」
「え…っ?」
千紗は息をのんだ。
和花さんは信じて、という瞳で千紗を見ていた。
「でも、私とお母さんは…2人暮らしです。お父さんがいたという話も聞いたことがないし…」
和花さんは千紗が納得するまで話をした。
今までのことを、全て。
「では、あなたが…お姉ちゃん」
「そうだよ。…写真でも撮ろっか」
「待って。明寿咲、1日遅れてごめん。お誕生日、おめでとう」
千紗からプレゼントを受け取る。
「ありがとう!」
「でもきっと、もう明寿咲は盛大にお祝いされてるよね」
話の流れがはやいけど、照れくさそうに笑う千紗を見ると、本当に仲直りできたんだと実感する。
「じゃあ、俺からもうひとつプレゼント」
研由の声がして、なんだろうと振り返ると、あごに手をそえられ、そっと頬にキスされる。
和花さんが小さく悲鳴をあげた。
「きゃっ…アピールがすごい」
も〜‼︎ 研由!
「明寿咲ちゃんもかわいい。ほっぺた、真っ赤だよ」
「そ、そんな…っ‼︎」
「まぁまぁ、写真撮るんでしょ」
龍二がカメラをかまえる。
「そうだった!」
「みんな、画面にはいった?いいね、いくよ。はい、チーズ」
パシャ。
まぶしいっ…。
一瞬、目を閉じてしまったけど、たぶん大丈夫なはず。
「ブフッ…」
龍二がふきだしそうになるのを、無理やりこらえてる。
「あ、明寿咲の顔…顔が…」
「ヤバいよ、これ!何この半開きの目!」
龍二のスマホをひっつかみ、慌てて消そうとする。
「これも思い出の1枚じゃん。ね?」
スマホを取り返され、高々と持ちあげる。
「そういえば千紗、このプレゼント開けてもいい?」
「もちろんっ!」
「わっ…!すごくかわいい!」
中にはいっていたのは、ネックレスだった。
チェーンにぶら下がっているのは、輝くリング。
「俺がつけてやるよ」
クールモードの李月が、ネックレスを持つと、首からさげてくれる。
「あ、ありがと…」
「明寿咲ちゃん、モテモテだね」
和花さんにそっと耳うちされる。
「いえいえ、これでも義兄なので…!」
「でも、血はつながってないんでしょ?ワンチャン有りかもよ」
「そんなことないです!」
ここは全否定しておかないと。
キスはファーストもセカンドもうばわれ、ずっとドキドキしてきただけ。
ん?でもそれって…いやいや、ありえないよ…ね?
でももしそうだとしたら、私は誰なのか決められないよ。
クールモードで少し笑う李月。
家では子犬だけど。
みんなを微笑ましく見つめる龍二。
すごく優しいもんね。
頭脳系だけど実はちょっとだけ、照れ屋かも?
そんな研由。
お兄ちゃん的存在…というかお兄ちゃんなんだけど、みんなをまとめてくれる時尾留。
私は、誰かを選ばなくてはいけないの…?
「どうした、明寿咲」
龍二が私の様子に気がついたのか、声をかけてくれる。
別に、この誰かと付きあえってわけでも、結婚しろってわけでもないもんね。
「ううん。なんでもない!」
私は笑顔をむけた。