「俺、明寿咲が読モするって言ったから一緒に撮影できると思ったのに、まさか撮影できないなんてな…」
「何?」
「だから今させて。はい、チーズ」
バックハグでツーショット。
すごく緊張して、胸がバクバクと高鳴っている。
「ちゃんとドキドキしてくれた?」
「し、したよ。ものすごく」
「俺を意識してくれて、ありがと。あと言っておくけど…俺は、明寿咲を義妹…同居人としてみてないからね」
意味不明なことを言うと、軽々と私を持ち上げる。
「ちょ、ちょっと龍二…!」
「お姫様抱っこされるの、初めてじゃないでしょ?だからいいじゃん」
もう、なんなの…!
「俺につかまっててよ?振り落としちゃうから」
「…そういう冗談はいらないから‼︎ 関係ないんだけど…私が捨てられた理由は、3人で生きていくのは厳しかったらしいの。でね、ほとんどが偽りの愛だったんだって。それを知ったときは、ショックで。そんなとき、4人に引き取られて…すごく助かった。引き取り先が、磯崎家でよかったって、心からそう思ってる」
私が龍二の方を見ると、肩をふるわせて笑っていた。
「…っ。伝えたいことはわかるけど…ちょっと明寿咲、説明下手すぎじゃない?」
「せっかく正直に言ったのに」
「ごめん、ごめん。はい、明寿咲の部屋に到着〜」
そうだった‼︎
お姫様抱っこされていたことを忘れていたなんて…。
「ありがと…」
「どういたしまして」
龍二は微笑んでその場をはなれた。
「あとで夜ご飯、作らなきゃ…」
学校の課題を終わらせると、睡魔がおそった。
「ちょっとだけ…」
ベッドに倒れこむ。
疲れた…実は今日、私の誕生日だった。
誕生日だっていうのも、自分から言うことじゃないし…。
ため息をついて、私は布団を頭からかぶり、夢の世界へはいってしまった。
「明寿咲、夜ご飯…」
その言葉で、目が覚めた。
忘れてた。すぐに作らないと…。
「お誕生日おめでと〜‼︎」
「ふぇっ?」
李月がクラッカーをパン、と鳴らす。
「お、おい!李月はやいって!…明寿咲、誕生日おめでとう」
そう言って時尾留がクラッカーを鳴らす。
続いておめでとう、という言葉と共に2つの音が鳴る。
ギュッと李月に抱きしめられて、頬が熱帯びてくる。
「明寿咲、夜ご飯はケーキを買ってきたんだけどね、僕が選んだんだ!食べてね♡」
「もちろん。みんな、いつの間に…すごい…ありがとう」
「あはは、どういたしまして。…お姫様、お席へお連れします」
時尾留が手を差し伸べてくれる。
本当にお姫様になったみたい。
そもそも、4人は学園の王子様だしね。
テーブルには高級そうなハンバーグや実が大きくて絶対おいしいシャインマスカット…。
天井には、お誕生日おめでとうという文字。
「これ、全部みんなで…?」
「まあね。でも、ご飯は全てがお持ち帰りのやつだけど…それでもいいかな、明寿咲?」
顔をのぞきこまれ、慌ててそっぽをむく。
「全然いいよ、ありがとう…みんなも…ちょっと待って、すごく嬉しい」
私が泣きそうになっていると、龍二が椅子をひいて座らせてくれた。
研由はおそるおそる自分の手を私の背中に手を当てて、さすってくれる。
さすが双子、息ぴったり。
普段は2人が双子だということを忘れそうだけど、こういうときは連携が取れている。
そんなことに感心してる場合じゃなかった。
4人に感謝を伝えよう。
「親にっ…捨てられたときは、誕生日をむかえるのが怖かった。13歳になるのが、怖かった。養子になったら、そこで私は上手くやっていけるのか…でも、今は言葉にならないくらい幸せ。13歳の誕生日は、最高の日になったよ。本当にありがとう」