「今の話が聞こえちゃったんだけど、千紗って…‼︎」
突然、和花さんが私たちの元へ走ってきた。
「知り合いですか?」
時尾留が訊く。
「末永(すえなが) 千紗ですよね⁉︎ 実はあの子…私の義妹なんです」
ぎ、ぎ・ま・い⁉︎
千紗が⁉︎
確かに、末永 千紗は、私の親友の千紗。
これには、みんな驚いているみたい。
クールモードの李月でさえ、口を半開きにしてる。
「ど、どういうことですか…?」
私がなんとかその言葉を口にすると、
「取り乱してしまい、すみません。車で落ち着いて話しましょう」
と和花さんが言い、私たちは無言で後を着いていった。
「それで、義妹というのは…?」
「はい。まだ千紗が1歳?本当に小さかった頃なんです。私の親が離婚することになり、千紗のお母さんと私の父が再婚しました。千紗のお母さんも離婚したみたいで…。そこで、千紗が私の義妹になりました。ですが、今では私の父と千紗のお母さんはあまり仲がよくないので、千紗と千紗のお母さんは2人で、私の父と私はそれぞれひとり暮らしをしている、というわけです。…千紗は私のこと、知らないでしょうね」
和花さんが最後につぶやくように言った言葉に、胸が痛くなる。
和花さんはすぐにパッと笑顔になる。
「見苦しいところをお見せしてしまってすみません。ところで、明寿咲ちゃんと千紗はケンカしちゃった、のかな?」
「あ、はい…あの、私、親に捨てられてこの4人と同居することになったんです。4人はすごく人気者なんですけど、私は地味で。だけど千紗は優しいから、親に捨てられたって言うと心配させてしまうから、言わないようにしてて。4人にも興味ないふりをして。ですが結果的に…大ゲンカしてしまったんです…」
「そっか…そうだっ‼︎」
和花さんは名案を思いついたとばかりに、私に笑顔を向ける。
「明日、千紗の家に連れて行って‼︎ 私、仕事休みだからさ‼︎ そして、言うんだ!明寿咲ちゃんは、千紗を想っての行動だったんだよって。義姉の私が言えば、きっと納得するでしょ」
あっけらかんと笑う和花さんに、4人と私は顔を見合わせる。
そんな発想、なかった…。
「明日は土曜日、だね。じゃあ、明日の午前11時頃に行きます‼︎ ちっちゃかった千紗、どれくらい成長したかなぁ。でも、明寿咲ちゃんっていういいお友達ができて、よかったよ。ではまた明日〜」
家まで送ってもらうと、和花さんは笑顔を残して去っていった。
「末永と、和花さん…か」
李月がポツンとつぶやくと、
「世間って狭いな」
と時尾留も言う。
その2人と研由が家に入り、玄関の外には私と龍二だけになった。