放課後、何事もなくむかえられたようにみえたんだけど…。
青白い顔をした千紗を見て、嫌な汗が背中をつたった。
「どうしたの、千紗…」
おそるおそるたずねてみると、
「信じられない…」
魂がぬけたような返事が返ってくる。
「千紗?」
「やめて!」
そういうなり、千紗は荷物をひっつかんで教室を飛び出した。
振り返ると、鬼塚さんがニヤニヤして私を見つめていた。
「私、約束通り、『特定の人』にしか言ってないからね?」
意地悪く鼻で笑うと、私に背を向ける。
私も慌てて千紗を追いかけた。
「千紗‼︎ 待って!」
ようやく見つけた、千紗‼︎
「明寿咲…私、信じたくない…」
「鬼塚さんに…何を言われたの?」
「わかってるでしょ‼︎ 学園の王子様に興味ないっていってたくせに、同居してんの⁉︎ なんで言ってくれなかったの⁉︎ 私、気になる人ができたら、いつでも教えてって…言ったよね⁉︎ 私、明寿咲の本物の親友じゃなかった⁉︎ だから何も言わなかったの⁉︎ それとも、私がなにかした⁉︎」
涙目で、大声で話す千紗。
「私、そこまで追いつめてたなんて…思わなかった…本当に、ごめ…」
「今までのはなんだったの⁉︎ 全部、偽りの友情だった⁉︎ 私、簡単に偽りを使う人、嫌いなんだけど‼︎ こんなんだったら、」
「偽りなんて、1番私がわかってるよ‼︎ 偽りの友情だったわけないじゃん‼︎ 親友にひとつやふたつ、隠し事したっていいよね⁉︎ 全部話さないといけないなんてきまりないから‼︎」
ヒートアップしていくケンカ。
私が、偽りということに、どんなに憎しみを感じたと思ってるの?想像もつかないくらい、苦しんで、悲しんで、それでも前を向いた。
「私こそ、偽りなんて、大っ嫌いだよ‼︎‼︎‼︎‼︎」
これは、千紗に言うべきじゃなかったのかもしれない。
けれど、私が何も考えていなかったわけじゃない。千紗が心配してしまうから、黙っていたのに。隠していたのに。
しかも、興味なし女子なんて言われたら、言えるわけがないよ‼︎‼︎‼︎
私は走り去るようにその場をはなれた。