幸太の元を去った後、愛良は優斗の元へ引き取られ暫く身を隠していた。
 このまま二度と会わないとして、この先日本にいてはまた会ってしまう確率が高いと判断して渡米しようと計画を立てていた。
 そんな時、フローレンシアと会った愛良。フローレンシアは仕事の関係でアメリカに帰る事になったと話してきた。
 愛良は一緒に着いて言ってもいいかと尋ねた。
 フローレンシア特に理由は聞かなかったが、愛良がそうしたいなら着いてきてもいいと言ってくれた。

 しかし出国を決めた時、愛良は体調の異変を感じた。
 吐き気をもよおし食欲が減り微熱も続いていた事から、何か病気にでもかかっているのではないかと病院受診をした。

 その結果…妊娠している事が発覚した。
 予想外の事に愛良は動揺を隠し切れなかった。
 
 間違いなく幸太の子供だった。
 二度と会わないと決めているのに…この事は絶対に知られてはいけない。そう思った愛良は、フローレンシアに相談した。

 フローレンシアは全てを知った上で愛良と結婚すると言ってきた。
 美紀の事が解決したばかりだが、愛良ともう一度新しい人生を歩きたいと言ってくれた。
 出国までまだ時間がある事から母親に愛良を紹介して両家の顔合わせをしたのだ。

 フローレンシアの母親も愛良が他の男性の子供を身ごもっていても結婚を承諾してくれた。

 これでいい…愛良はそう思った。


 
 だが。
 フローレンシアが殺害されてしまった事で、結婚は当然なくなり愛良がアメリカへ移住する話もなくなってしまった。

 お腹の中で育っている赤ちゃんは双子のようだ。
 10周目ならまだ中絶できる期間だ。

 
 愛良は決意した…。



 


 昼下がり。
 
 仕事をしている優斗の元に一本の電話がかかって来た。
 それは…

「…分かりました。それでは一度お会いしてお話ししましょう。…はい…分かりました、伺います」
 電話を切った優斗は小さくため息をついた。
「運命の繋がりは強いのだな…」
 そう言って小さく笑った優斗。