「や…やめろ…」
背中に激痛が走り声が思うように出せないフローレンシア。
「大丈夫よ、大人しくしていれば気持ちいいだけじゃない」
フフフと笑いながら美和は下着を脱ぎ捨てフローレンシアに、覆いかぶさり羽交い絞めにしてゆく。
「や…やめてくれ…あぁっ…」
悲鳴の様な声を上げたフローレンシアは体の力が抜けて行った。
痛みと気持ち悪い感覚に身動きが取れなくなってしまったのだ。
「いいわねぇ、やっぱりあなたって最高ねぇ‥」
ぐったりとなり動けなくなったフローレンシアに美和はやりたい放題性的暴行を加えて行った。
「いいわぁ…あん…最高…」
独りよがりとはこのことを言うのかもしれない。
無抵抗な相手に対して性的暴行を加える。その姿はかつて美和がされていた事と同じだ。
フローレンシアは意識が遠くなり、もう何も考えられなくなっていた。
「ふう…」
独りよがりで満足した美和はぐったりとなったフローレンシアを見下した。
「これでいいわ、欲しいのは、あなたの優秀な精子だけ。そしてお金もね」
落ちているフローレンシアの鞄から財布を抜き取りカードを奪った美和。
「さすが商社マン。ダイヤモンドカードもっているのね」
カードを手に取りほおずりして、美和は倒れているフローレンシアに歩み寄った。
「おしいわね、あなたの顔だけは残してあげたいけど。幸太さんには、叶わないもの」
そう言いながら自分のバッグの中からナイフを取り出した美和は、そのナイフでフローレンシアの首をグサッと切った。
ドクドクと流れ出す血を見てニヤリと笑いを浮かべた美和は、悪魔のような顔をしている。
数時間後。
公園のトイレを利用しようとした男性が多目的トイレから流れ出てている血に気づき警察に通報した事で、フローレンシアが刺殺されているのが発見された。
近くに落ちていたスマホに何かしら録画されているのが確認された。
その録画は美和がフローレンシアに性的暴行を加えていた場面が残されており、最後に首を切って逃走するところも写っていた。
画像分析から指名手配中の美和であることが判明して、目撃情報を求めている。
フローレンシアが殺害された事はテレビニュースでも報道された。そして、フローレンシアの母親から、愛良にも報告が入った。
ショックを受けた愛良だがどこかホッとしている自分がいて複雑だった。
「愛良。フローレンシアさんとの縁談は、なくなってしまったね」
リビングでお茶を飲みながら優斗が言った。
「はい…。こんなことになるとは…」
優斗は一息ついた。
「どうするつもりだ? 他に、縁談の相手をみつけるかい? 」
「いえ、無理です」
「探してみないと分からないよ。フローレンシアさんの様に、愛良の条件を承諾してくれる男性も世の中にいると思う」
「…もういいです。…一人で大丈夫ですから。初めから、他の誰かに頼ろうとしたことが間違っていたのだと思います」
そっと、その場を立ち去った愛良。
愛良の去り行く姿を見て優斗は、心配そうな目をしていた。
愛良はそのまま自分の部屋に戻って行った。
大きな洋館のようなお屋敷の二階に、南向きの日当たりの良い広い洋室。白いカーテン、そして青いカーペット。窓際に机と椅子、本棚。衣類はクローゼットに閉まってある。
寝室は奥側に別にあり、部屋の中央にはくつろげるように白いふかふかのソファーが置いてあり、木製のテーブルがある。
愛良はソファーに座ってじっとあるものを見ていた。
それは…母子手帳だった。
「…やっぱり、この子は産んではいけないのね…」
母子手帳には現在10週目と書かれている。