バン! と美和を床に叩きつけた。
「いやぁー!! 」
悲鳴をあげた美和だが男の強い力で無理やり襲われた。
「ほら、しっかりご奉仕しろって! 」
殴られて憔悴している美和は言うままに男にご奉仕を強要され、言うがままに従うしかできなかった。
「いい子だな。次は俺がしてやるよ」
乱暴に床に美和を押し倒した男は嫌がる美和に無理やり襲いかかり欲望のままに美和を抱く…。美和は気持ちいいとかそんなことを感じる事もなく、初めは泣いていたが、次第に泣くことも諦めやがて何も感じなくなっていった。
こんなことを繰り返され、美和はとうとう恐れていた事が起きてしまった。
それは…
男の子供を妊娠してしまったのだ。
月のものが遅れている事から検査薬を買ってきて検査をすると、しっかり陽性反応がでたことで妊娠が発覚した。
病院へ行くと6週目と言われた。
ここの所、男は別のお客がついてそっちの女に夢中で家に帰ってこない日が多かった。母親は働きづめで夜は店に行っていない。美和にとっては平和な日々だったが…。
誰にも言う事ができない美和はどうしたらいいのか分からなかった。
中絶は勿論だが、あんな男の為に中絶してこのまま一生子供が産めない体になってしまうのは悔しい。しかしこのまま子供を産むことも嫌だった。あんな男の子供のために我慢して出産する事は考えられない。
どちらをとっても最悪な結末しかない…ならば…死ぬしかないのだろうか?
そう思いながらさ迷い歩いていた美和は、歩道橋の階段を降りているとき、誰かに背中を押されて転落した。
幸い段数が少なく足をねんざしたくらいで済んだが、その事で妊娠していた子供を流産した。
出血する中で楽になると思う自分がいる中、こんな痛い思いをしているのに誰も助けようとしないと通り行く人を恨みの目で見ていた。
「大丈夫ですか? 」
恨みが募る美和に声をかけてきた青年がいた。
それはまだ大学生の幸太だった。
美和は痛みの中で幸太の声が神様の声の様に感じて嬉しくなった。
「救急車を呼ばなくちゃ」
幸太の傍にいた愛香がスマホで救急車を呼んだ。
寒そうに震えている美和に幸太は上着を羽織らせた。
「すぐに救急車が来ます。どこか痛いですか? 」
「…大丈夫…」
間もなくして救急車が到着して運ばれていった美和。
美和は救急隊員に運ばれてゆく中、幸太をじっと見ていた。
初めて人に優しくしてもらった…みんな知らんぷりしているのにあの人は私を助けてれた…あの人は運命の人…。
転落して流産した事で美和は解放され、その解放感から幸太の事を運命の人と思い込み一方的に好きになって行った。