その後。
 警察が駆け付け救急車で運ばれた人事部長だが出血多量で死亡した。
 ナイフは刃渡り15cmあり背中から内臓を貫通してたようだ。

 フードの者はフラフラ歩いているところを警察に捕まった。
「お金を払うからあの男を刺してと頼まれました」
 と言う男。
 闇バイトのような所で見かけて連絡を取って電話は非通知で喋っていた。
「100万渡すから殺してほしい人がいるの」
 と女に頼まれ人を殺してみたかったことから刺したと言っている。
 女とのやり取りは非通知の表示だけ残っている。
 
 歩道橋近くの防犯カメラも確認中で男が封筒を受け取っている姿も確認されている。



 夜遅くに幸太は警察から連絡があり人事部長が刺殺された事を知った。

 事務所内では金澤美和の雇用について人事部長が話していた事を伝えた幸太。その時警察から、金澤美和と関わるある女性が樫木法律事務所に雇用が決まっていたが。金澤美和と最後に会ってから急に体調不良になり緊急入院した事を知った。体調不良の原因は金澤美和と一緒にカフェで飲んだ珈琲の中に弱い農薬が入っていた事だった。もう少し量が多ければ死に至っていたようだが、そこまでの量ではなかったようだ。
 ただ美和が投入した証拠がないため被害届を出しても未解決のままになっているようだ。



 金澤美和。
 この女には黒い疑惑が沢山あると幸太は思った。
 採用された人が急病になり代わりに来たと言っているが、代わりを頼んだ覚えはないと人事は言っていた。とりあえず勤務態度を見て判断するしかないと言って見ていたが、総務で服を脱いで下着姿になったり注意されても話が通じない状態から見て、かなり頭が異常なことは分かった。

 今日も人事部長が解雇を言い渡した。
 すると人事部長が殺された…。

 
 美和には人事部長代理から暫くの間自宅待機するように連絡してもらった。
 とりあえず承諾した美和。


「…自宅待機? 誰も私の邪魔はできないのにねぇ…」

 美和は自宅の窓から外を眺めてニヤリと笑った。
 カーテンを閉めずに短い黒いスリップを着て外を見る彼女の姿は、外からはっきりと見えていた。
 10階にある彼女のマンションは3LDKで、キッチンには透明な瓶に入った骨のようなものが3つ置かれている。食卓のテーブルの上には、白いバラが一輪添えられている。

「…幸太さん…。あの日以来、私たちは運命の糸で結ばれているの…」
 美和は愛おしそうに白薔薇にキスをした。

「あの夜、私は深く傷つき、彷徨っていた…」


 今から6年前。

「いやぁー!! 」
 悲鳴を上げる美和を何度も殴りつけている若い金髪の男。背が高く力もある若い男に美和は逆らえないまま、ずっと性の奴隷のように扱われていた。
「うるせぇな! テメーは俺の奴隷なんだよ。さっさと脱げよ! 」
 震える手でブラウスを脱ぐ美和を見ながら男はイライラしている。
「さっさと脱げ! 」
 バシッ! 美和の頬を殴りつけ強引にブラウスを引きちぎり、むさぼる様に体を舐めまわし乱暴に襲ってゆく男。そんな男に美和はギュッと歯を食いしばって我慢するしかなかった。
 この男は母親の内縁の夫。この男で何人目か分からないほど、美和の母親は若い男に依存している。そして惚れる男はホストばかりで、そのホストをNO1にする為に昼間は必死に働いて日曜日も働いている母親。夜はホストに貢ぐためにお店に行って売り上げが上がらないときは、高級ボトルを開けている。その為、カードは限度額まで使ってしまい生活費が足らなくなり、内縁の男から生活費だけ出してもらっている。美和が社会人になってからは、美和のお給料を母親が管理して全てホストへ貢いでいる。その為、美和は自分の者が何も買う事ができず古い服ばかり着ている。美容院へも行くことができず髪も伸ばしっぱなしでボサボサ状態で結ってごまかしている。食事もあまりとる事ができず、毎日の様に男に聖の奴隷状態にされている。
 もう60歳を超える母親だが、家にいる時は毎晩若いホストに抱かれていて狭い団地の襖越しに母親の喘ぎ声が聞こえてきて美和は眠れない日々が続いている。
 昼間は事務員として働いている美和だが、男がもっと稼いで来いと言って風俗店に強制的に働かせるために雇わせて1日10人の男を抱いてこいと言われている。風俗で稼いだお金は全て男の店に貢がせている。

 この男との関係は3年目。NO1になりたい男だが思うようになれなくてイライラしているストレスを美和にぶつけ性奴隷にしているようだ。

「やめて! 今日は…」
 美和は今日は周期で排卵日。危険な日である事から拒んでいた。今までこの男に強要され、無理やり襲われてばかりで何度か中絶している美和。今度中絶したら妊娠できない体になるかもしれないと言われている。

「なんだ? 口答えするのか? 誰が生活費入れていると思っているんだ? お前の母親の稼ぎは、俺にほどんと使っている。その代わり生活費を出しているのは俺だぞ! 」