「この国の歴史について知りたいのであれば、近いうちに歴史書をお渡ししましょう。あくまでも歴史書ですので確実なものではありませんが、参考にはなるかと思います」
「……ありがとうございます」
「それで、あなたの今後の処遇についてですが。あなたは過去ではありますがこの国の王子の妃となるはずだった方であり、この国にとっては本当にかけがえのない大切な方です。本来であれば私の正妃に、と言いたいところですが、私はすでに婚約者がおります。……もし側妃でも構わないというのであれば、あなたを妃としておむかえすることができますが、いかがでしょうか」

 メイナードの言葉に、ヴェルデもローラも驚いた顔をする。確かに、ローラの身分と功績を鑑みれば妥当な提案だろう。だが、ヴェルデはなぜか胸の奥がモヤモヤとして仕方がない。

「少し早急すぎるのではありませんか。ローラ様は目覚めたばかりです。そんなことを言われても戸惑うだけでしょう」
「もちろんそれはわかっている。だが、目覚めて回復している以上、いずれ考えなければいけない問題なんだ。……すぐにとは言いません、ただ、頭の片隅にはおいておいていただけますか」

 メイナードが優しく微笑むと、ローラはメイナードを見つめ、どこかあきらめたような表情で静かにうなずいた。

「わかりました。お心遣い感謝します」