「ヴェルデ、この方を回復させることはできるかい?」
「完全に、とは言えませんが、しゃべったり起き上がったりすることができるようには」
「今はそれで十分だ」

 ヴェルデは姫の片手を優しくつかむ。姫は一瞬驚き顔を赤らめるが、ヴェルデは静かに瞳を閉じ、姫に回復魔法を施す。すると、姫は両目を見開いて驚き、ヴェルデを真剣な目でジッと見つめた。

(そんなに見つめられるとさすがに照れるな)

 姫の視線に耐えながら、ヴェルデはメイナードを見て静かにうなずいた。

「どうですか」

 メイナードが優しく聞くと、姫はパチパチと瞬きをし、静かに体を起こした。

「あ、の、私は、一体……エルヴィン様、は……?」
「その話は今はまだしない方がいいでしょう。ですが、安心してください。あなたのおかげで殿下は無事でした」

 メイナードの言葉に、姫は嬉しそうに目を輝かせ、ほうっと息をつく。

「よかった……」

 そんな姫の様子を見て、ヴェルデとメイナードは少しだけ寂し気な、困った顔をしながら目を合わせた。