「無理強いはしないよ。でも、僕としては君以外に姫を起こせる人間はいないんじゃないかと思っているんだ。この国でもたくさんの魔術師が姫を起こすために力を尽くしたけれど、姫は起きなかった。でも、規格外の魔術師と言われる君なら、もしかしたらと思ってね」

 ジッと美しい瞳でヴェルデを見つめるメイナード。その瞳には嘘偽りのない思いがあらわれていた。 同盟を結んで以降、メイナードとは良好な関係を築いて来たつもりだ。彼の期待に背くようなことはできればしたくない。それにメイナードからこの国に呼ばれた際の手紙には「頼みたいことがある」とだけしか書いていなかったが、恐らくはこのことが頼みたいことだったのだろう。

 実際、眠り続けているその人自体にも興味がある。一体、どんな魔法がかけられているのだろうか。

「……わかりました。お会いしてみます」
「ありがとう。恩に着るよ。もしも目覚めなかったとしても、気に病む必要はないからね」

 優しく微笑み、メイナードは目の前の扉をそっと開いた。

 部屋に入ると、部屋の真ん中に大きなベッドがある。メイナードに続いてベッドへ近づくと、一人の美しい女性が静かに眠っていた。

 明るいブラウンの長い髪の毛が窓から差し込む陽の光に照らされて輝いている。白い肌はきめ細やかで透き通るように美しい。まぶたは閉じられているが、そのまぶたが開かれた瞳は一体どんな色をしているのだろう。

 眠るその姿を見てヴェルデは思わず息をのんだ。