どのくらい泣いていただろうか。ヴェルデの腕の中で泣きわめいていたローラはようやく落ち着きを取り戻したようで静かになっていく。そんなローラの顔を、ヴェルデは静かにのぞき込んだ。

「ローラ様、大丈夫ですか?」
「……ええ、だいぶ落ち着きました。すっかりあなたの優しさに甘えてしまいましたね。でも、おかげで心が軽くなりました。本当にありがとうございます」

 そう言ってふんわりと微笑むと、ヴェルデと目が合う。そのあまりの近さに、そういえばヴェルデに抱きしめられていたのだったとローラは気づき、思わず赤面して体を離そうとしたが、ヴェルデは両手をローラの肩に置いて静かに話し始めた。

「ローラ様、ひとつご提案があります。……私と一緒に、サイレーン国へ来ませんか」
「……はい?」

 ヴェルデの提案にローラはきょとんとするが、ヴェルデは真面目な顔のままだ。

「あなたはこの時代にご自分が生きる意味はないと言っていました。恐らくこの国にいても辛いだけでしょう。それなら、いっそのこと私と一緒に我が国へ来て心機一転、新しい生活をしてみませんか。この国にい続けるよりもローラ様にとって良いと思うのです」

 突然のことにローラは目をぱちくりさせ、首をかしげる。この美しい青年は一体何を言っているのだろうか?

「……私があなたの国にあなたと一緒に行くことに、あなたに何のメリットがあるのでしょう?私のような人間を自国へ連れて行くことは、あなたにとってはむしろマイナスになると思いますよ。それに、メイナード殿下がそれを許すとも思えませんが」

 ローラの言葉に、ヴェルデはふむ、とひとつうなずいたがすぐに笑顔になった。