「私は、あなたに大変失礼な……いえ、とても酷いことを言いました。本当に申し訳ありません。謝って済む話でないことはわかっています、でも……」

 ローラが言いよどむと、ヴェルデは首を横に振って静かに口を開いた。

「いいんです。言われて当然です。あなたはそれだけ苦しんだのでしょうから」

 そう言って、ヴェルデは静かにローラの手を優しく掴んだ。それは、ローラが目覚めたその日、回復魔法を施すためにしたことと同じ動作で、ローラはその時のことを思い出して胸が高鳴ってしまう。

「起きたら百年も経っていただなんて、本来であれば信じられないはずです。それでもあなたは我々の話を聞いて、自分のことよりもまずエルヴィン殿下と国のことを気にかけた。私もメイナード様もそのことに驚き、なんて健気な方なのだろうかと思いました。そんな美しい心の持ち主であれば、目の前の現実に戸惑い、錯乱するのは当たり前です。そもそも、百年も眠っていたことを簡単に受け入れられるはずがない。我々ももっとそのことに気を配るべきでした」

 静かに、心の底にふわりと響き渡るような優しい声。ヴェルデの言葉を聞きながら、ローラは心の中が暖かくなるのを感じ、じんわりと目頭に涙がにじんでくる。

「どうか、私に話してくださいませんか。あなたの戸惑いや苦しみを、私も知りたいのです。それに、それがあなたを目覚めさせた私のすべきことだと思っています」

 最後の一言に、ローラはハッとしてヴェルデを見つめる。

「大丈夫。何を言われても私は全て受け止めます。気持ちがわかるなどと軽率なことはもちろん言えませんが、それでも、受け止めることはできると思っていますし、受け止めてみせますよ」

 ね、と優しく微笑みながらヴェルデは自分の両手でローラの両手を包み込む。その暖かさに、ローラは心がだんだんとほぐれていくようだった。そうしてゆっくりと口を開き話始めた。