誰かが…終わりがあるから始まりがある。





そんな事を言っていたような気がする。


じゃあ逆は…?始まりがあるなら終わりもある。なら始まりなんてなければいい。



そんなことを考えながら私はどこかのマンションの屋上に来ていた。





こういう時、人はあぁ夜空が綺麗だな…





あぁ大切な人に連絡してないからしなければ…




とか思うのだろうけど生憎私には夜空はもちろんの事景色は真っ暗闇にしか見えないし、大切な人なんて一人もいない。



別に私はなにか理由があるから死にたいんじゃない。



何も理由がないんだ。ただ疲れてしまった。ただそれだけの事。




他の人が聞いたらそんなんで死ぬなって言われるだろうな。



まぁこんなこと考えていてもキリがないか、そう思いフェンスに手をかけようとしたその瞬間…



「お姉さん。」


誰かに後ろから声をかけられた。


マンションの住人でも来てしまったのか…そんなことを思い、


「すみません夜空を見てただけなんです。」と答え、


別の所に移動しようとコンクリートの地面に置いてあったカバンを持った時その人はまた言った。


「お姉さん、暇ですか?」


私は一瞬頭の中が?で埋めつくされた。


暇、とは?自分で言うのもなんだけれども今は深夜だ。


「あの、暇…ってナンパですか?」と私はその時やっと後ろを振り向いて言った。


そこに居たのは、大学生くらいで、ぱっちりとした瞳にすらっとしたいかにもモテそうな感じの男がいた。


タイプじゃないけど。そう、思いながら次の言葉を待つ。


「…。」


なぜか、沈黙が訪れた。



10秒ほどの沈黙の後に

その男は、一瞬困惑した表情になりこう答えた。


「ナンパです…?」


ナンパです…?ってなんだよ。なんで「?」が付いてるんだよ。余計に分からない。


そう心の中に1人でツッコミを入れ構ってられないと思い、「そうなんですね」と返しその場を後にしようとした。


すると、男は「俺、ナンパなので…!」となぜか慌てて「明日の同じ時間にまたここで待ってます。」と私に何かを近づいてきた。


「これ、俺のこと忘れないように」と言いながら出したのは青い、いるかのキーホルダーだった。


「…いるかのキーホルダー。」思わず私が呟く。


「これ大事なものなので、絶対に俺に返してくださいね?」そう言って私の目を見たあと、その男は帰っていった。


屋上に取り残された私はめんどくさい事になったな、と思いながら真っ暗闇の夜空といるかのキーホルダーをしばらく眺めていた…。



ーこれが私の人生を変える、きっかけだったー