「───もう2時間ずっとああなの。
なんか弱ってるしボロボロだし、声もかけらんない」
午後8時過ぎ、館内もクローズし、レジを締めようとしていたときのこと。
ここ、某百貨店に展開されているアパレルブランド店の店長である千瑚さんが、焦ったような声色でどこからか慌ただしく戻ってきた。
「え…まだいるんですか……」
「もーーうやだやだ。私ああいう人ダメなのよう、怖いのよ〜〜!」
「店長落ち着いて!怖いのはみんな同じです!」
近隣ブランドの店員さん達がせかせか締め作業を始めるなか、千瑚さんと先輩たちの声が、しんと静まった館内に響き渡る。
「フロアマネージャーから折り返しは?」
「一切無くて、なんなら電源入ってないっぽいです」
「倉田ちゃんが警備員と保安スタッフにも連絡入れてくれたんですけど、別フロアでなんか不審者現れたみたいで、そこに」
「もータイミング〜!」
がっくし肩を落とす千瑚さん。