グラスの淵に付いた塩のしょっぱい味が、口を付けると同時に舌に広がる。

 だけどその後すぐに流れ込んできたグレープフルーツジュースの爽やかさと苦みが上手く混じり合って、普通のジュースとは少し違う独特な風味が生まれる。




「美味しい」


「良かった。飲みにくかったら塩はグラスの中に落としてもらっても良いし、お好みで調整してください」




 私は静かにうなずいて、また一口流し込む。

 グラスがすっかり空になる頃には、涙は完全に止まっていた。




 ただのジュースをとことんカッコつけただけの飲み物だという説明は何だか好きだ。

 何かと背伸びをしたがる私になんだかお似合いじゃないか。




 ──そしてこの日から私は、この店に三日と空けず通い詰める常連客になったのだった。