「で、すごく急ぎの用事ってなによ。」 と廊下を進みながら弟に話かける。
「……怒ってる?」
「なんで。」
「なんか、ふつーに『友達と居たかった』みたいな。演技は?」
「…………。」
口を開けては閉じ、開けては閉じを繰り返す。言葉に詰まった。友達と居てはいけない。作ってはいけない。なぜなら私は、"普通の人"とは違うから。
「……そう、見えた?」 数秒の沈黙の末、行き着いた言葉はこれだった。
「うん。」
「なら、私演技上手だね!」
なんとか、交わせた?でも、おかしいな、私自身クラスメイトに情なんかないはずなのに、図星をつかれたかのようなこの、気持ちは……。
「……まあいい。今日、親父から呼び出し。」
「お父様から?」
「うん。」
「な、なんで。」
「話があるんだと。」
「で、でもお父様から呼び出し!?え、えそんな事ある!?」
「世の中にはそんな事もあるんだよ、頼むから落ち着け、うるさい。」
「ご、ごめん。」
う、嘘……。私達の父親は全国を飛び回る資産家だ。所有しているあちこちに行くため父にはほぼ会う事はない。……お母さんは、私達を産んで逝っちゃったみたい。双子だからね。出産はキツかっただろうな……。