「綺世」 と私を呼ぶ声がした。声の聞こえた方向に居たのは見覚えのある姿。弟だ。
「凛世!」と駆け寄る。
凛世は私の弟。同い年なのに姉弟?そう、双子だ。
「凛世、どうしたの?今日バイトって言ってなかった?」
「うん、バイト"だったよ"」
「そう。私まだ用事あるから、用ないなら帰ってよね」
凛世の意味深な言い方が若干気になりつつもクラスメイトに勉強を教えに戻らなければと思い弟から離れようとするが__
「今日、一緒に帰らない?」
そう、呼びとめられる。凛が私と一緒に帰ろうと誘うのは大抵何か用事がある時だ。
「……わかった。急ぎ?」
「うん、凄く。」
「ちょっと待ってね。」
『凄く』急ぎねえ……。とりあえず中田さんに……。
「中田さん、申し訳ないんだけど、勉強の続きは今度でいいかな?」
「うんん、大丈夫だよ神堂さん。私教えて貰ってる立場なんだし謝らないで!」
「うう、ごめんねえ。また明日ねぇ、。」
「うん、また明日。」
少しの名残惜しさを残しながらも弟の元へ向かった。