○誰もいない教室
眞王「じゃあ契約成立」(にやりと笑う眞央)
華子「えっ!?そんな私はっ……っ!?!?」(華子の瞳が大きく見開かれる)
眞央がキスを落とす。
突然のことに状況が飲み込めない華子。
目を閉じてキスをしていた眞央が顔を離し、どこか満足気に笑う。
モノローグ【地味に、ひっそりと過ごすはずの高校生活は、この魔王との契約で、一瞬にして崩れ落ちたのです…】
○教室・朝の休み時間
にぎやかな教室内でひとり席に座って本を読む華子。(暗い茶髪・肩より少し長いストレートヘア)
クラスの女子1「そういえば王子、また振ったらしいよ。しかも学年のマドンナ、結城さんだって」
クラスの女子2「えっ!?あの結城さんが振られたの!?」
教室の端では、女子たちが恋愛の噂で盛り上がっている。
由依「ハーナコ」
聞き慣れたどこか威圧的な声に、華子はびくりと肩を震わせる。
中学からの付き合いの、島田 由依(しまだゆい・明るい色の長い髪を緩く巻いて、派手目の化粧、少し吊り目で気が強そうな印象)。
華子「島田さん…あっ!」
華子の手元にあった本をぱっと取り上げる。
由依「まじで本オタク。ま、根暗なあんたにはぴったりの趣味だわ」
乱暴に返される本。
由依「ねーハナコー。これ、運んでくんない?」
華子「え…これ」
ドサッと机に置かれたのは、日直が運ぶことになっているノートの束。
黒板をちらっと見れば、日直の欄には由依の名前がある。
由依「ハナコ、どうせ暇でしょ?ほら、早く持っててよ」
華子「あのっ」
声をかける前に、由依は「よろしくー」と言って友達の元へ戻っていく。
華子「(はあ…なんで私ばっかり…)」
積まれたノートを見つめながらため息をつく華子。
○昼休み
親友の遥(他クラス、少し癖のあるショートヘア・活発で元気な印象)と昼食をとる華子。
遥「まったく!カコは島田さんのパシリじゃないのに!」
華子「あはは…」
ご立腹の様子で卵焼きを食べる遥に苦笑いを返す華子。
遥「カコも、あはは…じゃないわよ!ちゃんと断る時は断らなきゃダメ!」
華子「それはわかってるけど…」
ごもっともな言葉に、華子は少し俯く。
【私の名前は芹沢 華子ーー漢字が"ハナコ"とも読めるから、ハナコって呼ぶ人もいるけど、本名はカコ】
【好きなことは読書。でも、自分の気持ちをはっきり口に出すことが苦手】
【内気で地味な私だけど、大好きな親友、遥のおかげもあって、それなりに平和な学校生活を送れてる】
(楽しげに話す遥が映る)
遥「あ、そういえばさ、王子、また振ったらしいね」
華子「…王子?」
小さく首を傾げる華子。
華子「(誰のことなんだろう…?)」
遥はポカンと口を開けていたが、どこかびっくりしたように「もしかして…」と呟く。
遥「カコ、王子のこと知らないの!?」