時間は、一年前に遡る。
 入学式を終えた彼ら四人は、各クラスに分かれた。
 1組に柴田、2組に井上、3組に青木、
そして4組に小野田。
 ホームルームが終了した四人が校門のところに
集合する。

 柴田、井上、青木、小野田の四人は中学から
の腐れ縁。
それぞれ個性豊かな四人、タイプが全く異なる四人であったが、なぜか……一緒にいる。

 「4組、遅いな。小野田何してんだ?」
 とワイルド系の青木が言った。
 「まあ、そんなにイライラしないの。ほらチョコ食べる?」
 井上が青木にチョコレートを渡す。
 「そろそろ、来ますかね……彼」と柴田が言った。
 程なくして「ちょっと~ちょっと、
いたよ……いた。
 超かわいい子がいたよ~」と小野田が三人の元に
駆け寄って来た。
 「小野田、何言ってるの?」と井上が言った。
 「可愛いって……」青木が言った。
 「小野田、それは本当か?」と柴田が言った。
 「本当だってば。ほら、あ四人の目の前を友達の女子と通り過ぎるサラサラ髪の女の子。
 「可愛い」
 「石鹼のいい匂い」
 「知的だな」
 「ライバルが多いよな」 
 「ライバル?」と三人が聞き返す言った。
 「そうだよ、彼女確実にモテるよ。
 この学校、圧倒的に男子が多いじゃん、
少数の女子の中に
あんな女の子が混じり込んでるなんて。
 すぐに誰かに取られちゃうじゃん」と小野田が言った。
 「う~ん。それはまずい」青木が言った。
 「なんとかしないと」井上が言う。
 「どうする柴田」小野田が問う。
 「まずは、四人とも彼女に一目惚れしたということでいいのか?」と確認する柴田。
 「え?柴田も参戦するってこと」青木が驚く。
 「まぁ、そういうことだ」冷静に返す柴田。
 「参戦って何? ね~何?」甘え声の井上。
 「四人が彼女を射止めるためには」柴田の目が光る。
 「ためには?」三人の声が合わさる。
 「まずは、皆で同盟を組んで、他の奴らを蹴散らす。
 そして、そこからが勝負だ」と柴田が言い放つ。
 「それいい! 賛成」と井上が笑う。
 「まぁ、仕方ないな」と青木が笑う。
 「じゃあ、それで」と小野田も賛成する。
 「それでは、四人の誓いの証として『メガネ』を身につける」
 と柴田が提案した。
 「何で、メガネなんだ?」と青木が聞いた。
 「別に深い意味はないが、普通、同盟の証に何か
お揃いのものを所持しているだろ?
 よく見たら、ひとりを除けばみんな
メガネつけてるし、
いいかなぁと思って」と柴田が答えた。
 「確かにそうだな。一人を除けばみんな
メガネ男子だしな、わかった」
 と青木が言った。
 「ちょっと、俺だけメガネじゃないじゃん、
裸眼じゃん、視力1.5じゃん」と小野田が言った。
 「仕方ないじゃん、小野田、伊達メガネ買いに
つきあってあげるよ」と可愛い笑顔で
井上が小野田の肩に手を回す。

 通学路を歩く4人の男子高校生。
 高校一年の春、四人の高校生活が始まった。