放課後の屋上にいる四人のメガネ男子。
 「ね~俺たちの勝負、なかなか勝負着かないね」
 四角い黒縁メガネの井上が言った。
 「そうだな~色々なことが起きたけどな。
 なかなか勝負つかね~な」
 腕組みした細長ノンフレの青木が言う。
 「なかなか彼女の心、つかめなかったね」
 と残念そうな小野田た。
 「そ~だよ。柴田が告白したのに、
玉砕したしな」
 井上が言った。
 「玉砕って言うな玉砕って……」と柴田が溜息をつく。
 「でも、何でだ? この4人の中では
柴田が一番脈ありだと思ってたけどな」と青木が言った。
 「言われたんだってさ彼女に」小野田が呟いた。
 「何て? 何て言われたの? 地下アイドルが
いや~とか?」
 と興味深々の井上。
 「ちがうよ。俺たちの仲を壊したくないらしい」
 小野田が言った。
 「俺たちの仲を壊したくないって
どういうこと?」井上が聞いた。
 「だから俺たちが、彼女を巡り戦っていた姿、
彼女には『仲良し男子の戯れ』に見えてたらしい。
 だから、その一人と個人的に付き合うと、
俺たちの仲が崩壊するって! 
 そんなの考えられな~いって
言われたんだって」と小野田が言った。

 「そうなのか……じゃあ、ノートを運んだ
ことも、ミントス渡したことも、家庭科室のことも、
壁ドンのこともか?」と青木が言った。

 「そうみたいね。でも、確かに俺ら誰かが何かを
するたびに見てたよな。
 そいつの行動を三人で……廊下でも、教室でも
家庭科室でも」と井上が言った。
 「あ~あ、じゃあ、もう無理じゃん。
 『浜辺さん争奪合戦』、
俺なんか料理研究会にまで入部したのに
小野田が言った。
 「仕方ない、俺ら仲良しなんだから」
 ボソリと柴田が言った。
 「仕方ないな」小野田が言った。
 「仕方ない」井上が笑う。
 「元通りか……」と青木が頷く。

 半年に及んだ『浜辺葵争奪戦!』は、 
本日、今ここに閉幕した。

 「あっ! 浜辺さ~ん、おーい!」
 中庭を歩く葵を見つけた井上が手を振った。
 その声に気づいた葵は屋上の方を見上げると、
ニコっと笑い手を振った。
 夕陽を背に屋上に並ぶ四人の
『イケメン メガネ男子』も笑顔で葵に手を振った。