小野田が家庭科室に取り残された日から
1週間程が経過した。
 雲一つない快晴の良き日の昼休み、
四人の『メガネ男子』柴田、井上、青木、
小野田は屋上にいた。
 「うわ~今日は天気がいいね」
 四角い黒縁メガネの可愛い井上が言った。

 「ああ、今日は快晴だ。なんだ小野田、
お前暗いぞ。
 不意に襲ってきたゲリラ雷雨にでも
あったのか?」
 と珈琲牛乳をストローで飲みながら
細長ノンフレの青木が言った。

 『生贄』状態で『料理研究会に入部させられた』
伊達メガネの小野田がどんよりとした表情で言った。
 「この裏切者め」と小野田が三人を睨みつける。
 「何、何? 裏切者って。ひどいな~小野田」
 と井上が笑顔で言った。
 「だってさ、あの日以来、放課後毎日、毎日
浜辺さんに家庭科室に連れて行かれて。
 ティスプーンでさ料理の『出汁』の味見
ばっかりさせられて」

 「味見って……いいじゃないか。
 なあ、柴田」
 青木がシルバーフレームの柴田に言った。

 それを聞いた小野田は、
 「良くない~! 良くないよ」と口を尖らす。
 「何が良くないんだよ?」と井上が言った。
 「だって、浜辺さんと望月さんが笑顔で
和風の出汁、イタリアンのコンソメ、フルコースの
何かわかんないスープ。
 そしてスウィーツの甘~い、甘~いシロップを
順番に俺に飲ますんだよ。
 毎日、毎日それも無限ループで……。
 もう、お腹の中が凄いとこになってて、
ジャンプすると、チャポン、チャポンってほら!
 聞こえるだろ?」と小野田は三人の前でジャンプする。

 「聞こえるか? 柴田」と青木が言った。
 「いいや、何も聞こえない」と柴田が返す。
 小野田の顔が涙目になる……
 それを見た井上が慌てて言った。
 「とにかくさ、まだ入部して間もないからさ
慣れるよ……そのうち……多分」と苦笑いする。

 「まあ、しばらく様子を見るか? 柴田」
 と青木が言った。
 「うん、そうだな」と柴田は何かを
 考えながら言った。

 雲一つない快晴の良き日の昼休み。

 屋上にいる四人の『メガネ男子』

 『浜辺葵争奪戦!』のはずが、
突然の『小野田の料理研究会入部』により、
休戦? を余儀なくされた。

 どうなる『浜辺葵 争奪戦!』
 どうなる小野田……。

 何を考えてる……柴田
楽しい、楽しいお昼休みがもうすぐ終わる。