その日の放課後、
 葵を囲む『メガネ男子』前の井上、後ろの青木、
右隣の小野田、左隣の柴田は、とある教室の前に立っていた。
 朝、突然に部活の誘いを受けた青木、
流石に一人では……と思い三人に声をかけた。
 「頼む! 放課後、俺と一緒に部活を
覗きに行ってほしい」
 『浜辺 葵争奪戦!』の『個人戦真っ只中』では
あったものの、強面がトレードマークの青木の
つぶらな瞳と子犬のような表情に一同、ぷぷぷっ!
と笑いをこらえながら、放課後の同伴出席を快諾したのだった。
 もちろん、葵にも四人で部活を見学することは了承済だった。
 「おい! 青木、ここは何部だ?」
 とシルバーフレームの柴田が言った。
 「さあ、俺にもわからん」
 腕組した細長フレームの青木が答える。
 「でもなんか、その……男子多くね?」
 伊達メガネの小野田が言った。
 「うん、確かに……」
 四角い黒縁メガネの井上が言った。
 「仕方ないよ。だって、うちの学校の男女比率
7:3だからね」
 と井上が続ける。
 「それにしても多くね?」と小野田が言った。
 「ああ、多いな『メガネ』をかけた男」
 青木が言った。
 「確かに多いぞ、この教室にいる奴ら、
ほとんどが 『メガネ男子』じゃないか。
 それに何だ、あの格好……」と冷静に柴田が言った。
 四人が驚くのも無理はない、
 彼等が立っているのは、家庭科室の入り口……
 そして『三角巾』を頭につけ『エプロン姿』の
『メガネ』をかけた男たちがいるではないか。
 それも、明らかに男女比率7:3 の人数で。 

 四人は教室の入り口に立ち尽くす。

 その時、後ろから声がした。

 四人が後ろを振り向くと、イカツイ顔をした
大男と隣に可愛い浜辺葵が立っていた。

 「やあ、ようこそ我が『料理研究会』へ
四人も体験入部してくれるなんて、
俺は嬉しいよ。
 君らの名前は浜辺さんから聞いてるよ」
 と言うとイカツイ顔をした大男は
四人の手を両手で順番に握り始めた。

 イカツイ顔をした大男の隣ではニコニコと微笑む、
可愛い葵が四人を見ていた。

 「料理研究会? 体験入部?」
 井上、青木、小野田、柴田は互いの顔を
見合わせるのであった。