一人の女性が、駅のホームで佇んでいた。
”わたしは、なんの為に生きているの?”
”わたしは、彼のなんだったの?”
”わたしの家族って、一体なんなの?”
”わたしの居場所ってどこ?”
そんなことを、わたしは思いながらホームに居た。
そして、数分たった。
すると、電車が近づいて来た。
わたしは、良かったと思った。
だけれど、それは回送電車だった。もちろん、扉が開くこともなく、その電車には乗れない。
はず、だった・・・。
突然、目の前の回送電車の扉が開き、
「そちらの女性の方。お乗りなさい」
と、男性の声で、アナウンスが流れた。
「えっ・・・わ・・・わたし・・・?」
「そうですよ。さぁ、心配しないで早く」
「はい。わかりました・・・」
そうわたしは言って、電車に乗った。
「まもなく、こちらの回送電車は発車します。こちらの電車はパラダイス行きです」
「え・・・パラダイス・・・?」
電車は、発車した。
わたしは、窓の外を見た。よくある景色だった。
そして、いつの間にか、わたしは眠っていた。
「到着。到着。パラダイスです。パラダイスです」
また、アナウンスが流れた。
わたしは、目覚めて咄嗟に窓の外を見た。
洒落た街並みが見えた。
わたしは、電車を降りて駅を出て、街に出た。
そこには、一軒だけショットバーがあった。
その他には、なにもなかった。しかたなく、そこに入った。
「いらっしゃい! お嬢さん」
「なにか飲み物もらえますか?」
「かしこまりました」
「メニューは、無いのですか?」
「当店は、全てバーテンダーのお任せになっております」
「そう・・・です・・・か・・・」
数分後。
「はい。どうぞ。お召し上がりください」
そのカクテルらしき物体は美味しそうな色をしていた。
「パラダイス・カクテルです」
バーテンダーは、言った。
わたしは、ゆっくり口にそれを運んだ。
「美味しい・・・それに・・・なんだか不思議な気分・・・」
「パラダイスへようこそ」
バーテンダーは、言った。
そして、わたしの意識が遠のいた。
しばらくしてから、わたしは、ゆっくりと目覚めた。
そして、目の前を見た。
「わぁ――――――!!」
そこには、綺麗な山々や丘があり、河も流れていた。
心地の良い風も吹いている。
「気持ち良い!!」
足元を見ると花々も無数に咲いている。
「なんて綺麗なの!!」
わたしは、様々な光景をただ、呆然と眺めた。
次は、丘の上にあがった。そこから海が見えた。
青い海だ。
底が透き通るほどの青い海だ。
その風景に見とれていると、知らないうちに赤いものが
降ってきた。紅葉だった。
もう一度、わたしは辺りを見回した。
そこには、赤い葉を揺らしている木々たちが見えた。
そして、今度は雪が降り始めた。
「えっ・・・雪・・・?」
次第に、辺りが雪化粧になって行く。
「すごいわ。ほんとにすごい」
「ここは、どこなの?」
「パラダイスですよ。さぁ、お戻りなさい」
そのバーテンダーの声で、目が覚めた。
すると、そこは、最初の駅のホームだった。
わたしは、唖然とした。
「一体、どういうこと?」
一人で、また佇んでいると声がした。
「またの起こしをお待ちしております」
駅のアナウンスの声だった。
わたしは、いつの間にか笑顔になっていた。
END