1話 名前のない少女
ー魔物の歴史ー
ー1086年
エヴォ帝国の始帝王であるクハン王が、人間を襲い、危害を及ぼすものを"魔物"と定義した。
ー1111年
始帝王の息子リューム帝王が、魔物が帝国に近寄らないよう魔物が住むための集落を建設。
「……こんなにつまらないものはないね」
窓の外から初めて見た人間の第一声が、こんな言葉でいいのだろうか。
何が書いてあるのかは、全く読めない。
ただ、形だけは覚えられそうだ。
「オンゼ、これを元あった書物庫に、戻しておいてくれ。今から、"人間を襲い、危害を及ぼすもの"の、集落に行ってくるよ」
「……ちゃんと覚えてらっしゃるじゃないですか」
「当たり前だ、もう少しで16。帝王になってから早4年も経つ。そのくらいは覚えていないと」
……私もそろそろいかないとな。
それこそ、"この世で1番つまらない"集落に。