それからの私は、多少頑張ったと言えるのかもしれない。

 相変わらずその後も失敗は続き、さんざんリラフェンや他の侍女たちにも迷惑を掛けた。でもここでは叱られることはあったとしても、誰ひとりとしてその後私を除け者にすることはなかった。

 リラフェンの言った通り、私にもひとつずつできることが増えていく。
 といっても、掃除や洗濯といった簡単な単純作業の一部に過ぎず、それらはこの年の人間ならできて当然と思われるものなのかもしれない。

 でも、私にはそのひとつひとつが思いもよらない喜ばしい体験だった。新しい経験がどんどんこの身に刻まれてゆき、それは毎日の実践によってその都度更新されてゆく。大げさかもしれないけれど、まるで生まれ変わっていくような感覚を覚えていた。



 ――そして、ハーメルシーズ城に来てひと月ほどの時が経った。

「とっても綺麗に干せるようになったわね」

 洗濯ものの皺を、パシンと音を立ててと伸ばした私を後ろから褒めてくれたのは、ベラさんという、私より少し年上の女性だ。リラフェンより入った時期は遅いらしいが、彼女とは違った形で皆の相談役として頼りにされている。